#48 my brand new way / 小池徹平

流れ星のように儚い速度で過ぎ去る今を

目に焼き付けて

見慣れた日常?そうじゃないだろう

新しい道 君と歩こう

                my brand new way / 小池徹平

 

WaTで活動していた頃のソロ企画で、

ウエンツ瑛士のソロ楽曲と両A面で2007年にリリースされた2ndシングル、

「Awaking Emotion 8/5 / my brand new way」収録曲。

爽やかな彼のイメージにぴったりの前奏と、

高音でも力を抜いたようなクリアな歌声が伸びやかに続くのが印象的な一曲。

彼の曲は世間的には圧倒的に「君に贈る歌」の方が知名度が高いが、

本作はキーが高く歌唱力が要求され、曲のクオリティも高く感じる。

最近は歌唱と言えば年末のテレビ番組で多少見かける程度のメディア露出となったが、

今も特番に呼ばれるのはその歌唱力を認められているからなのではないだろうか。

 

一瞬一瞬の積み重なりである時間。

今しかないこの瞬間を大切に、と歌う曲は多いが、

「流れ星のように儚い速度で過ぎ去る今」と言う表現の仕方が、

誰にでも簡単にすっと理解できる表現になっていて、

曲を聴きながらでも歌いながらでも、

この言葉が無意識に頭に入ってくる感覚が気に入っている。

 

自分が努力して拓いた道は、その過去がなければ歩くことの出来なかった道。

見慣れた日常を新しい日常に変えることができた、

その景色を目に焼き付けて歩き出す。

その新しい感覚も、やがては過去になるのだけれど、

一所懸命に切り開いた人生の記憶は、忘れることはない。

そんな経験があるから、次の向かい風にも、また向かっていけるんだ。

シンプルだが、「頑張れば報われる」ということを実現した主人公を描いている。

 

今を忘れないように残す写真。

写真を撮っておけば確かに「このときはこんなことがあった」と、

思い出すことが出来るが、

写真があることによってそのシーンのみが鮮明に記憶から切り取られ、

残すことができなかった瞬間のことを次第に忘れていってしまうことが多い。

 

思い出は心の中に仕舞っておく人もたくさんいるだろうが、

時間と共に薄れていく記憶の中で、

目に焼き付けたものはどのくらい鮮明に残るのだろうか。

印象に残ったシーンだけがフラッシュバックされるものだが、

「この瞬間だけは絶対に忘れない」

そう心に誓って目に焼き付けたものも、次第に薄れていくものだ。

 

発達した技術に伴い多くの記憶媒体が出回っている現代。

私たちは大切な「記憶」を残すことに、

技術の力を頼り「記録」することが大半である。

でも、本当に心の底から感動したその瞬間の感情は、

何を使っても形に残すことは出来ない。

儚い速度で過ぎてしまう忘れたくないその瞬間をしっかりと目に焼き付けて、

また新しい日々を踏み出す糧にする。

少しずつ記憶が書き換えられたり、重要な場面以外の記憶が薄れたりするのだけれど、

それを繰り返して人は生きる力を養っていくのだ。

#47 恋をしている / Every Little Thing

「やっぱりいいな

こうゆうのが凄く嬉しいな」

君はそう言って少しのあいだ

俯いては笑った

今日はすごく冷えるから

あたたかくしてさ

おいしいなぁってビールなんか飲んでさ

そうやってなんてことない毎日に

ほらまた救われていたよ

「やっぱりいいな」

廻り廻った君の言葉をかみしめて泣けた夜

        恋をしている / Every Little Thing(作詞:持田香織

 

2007年にリリースされたEvery Little Thingの33rdシングル、

「恋をしている / 冬がはじまるよfeat.槇原敬之」収録曲。

聴くだけで寒い冬に温かい光を灯してくれているかのように感じる、

持田香織の包み込むような柔らかな歌声に絶妙に絡むサウンドが印象的な曲。

平凡な中に幸せを感じる、日常をテーマとする歌詞が多い彼女の歌詞。

本作はまさにその王道とも言える歌詞に、「冬」というテーマが添えられている。

 

「やっぱりいいな」

寒い日に部屋を暖かくして、冷たいビールで喉を潤す。

一日のそんな些細な幸せに、やっぱりいいなぁと感じた後に、

改めてサビで「やっぱりいいな」という言葉が登場する。

ひと言目は恐らく素直に出た言葉。

二言目は、今この瞬間を思い、幸せを感じて出た本音だろう。

あなたとこうやって、なんてことない毎日の中に幸せを感じられることが、

素でも、思い返した後にも「やっぱりいいな」と思うのだ。

そんな廻り廻った言葉を相手から聞けた主人公が、

心からまたそこに幸せを感じ、涙を滲ませる。

 

この情景を思い浮かべるだけで、

幸せを分けてもらえた気持ちになるのと同時に、

暖かさを象徴するかのような伴奏が更に心を暖めてくれる。

こんなに聴いていてほっこりできる曲は、数少ないのではないだろうか。

 

「幸せ」の尺度は人ひとりひとり皆違っている。

彼女が描いたような日常に、毎日幸せをかみしめている人もいれば、

ありきたりな日常にうんざりしている人もいる。

でも、小さな幸せを感じられることは、とても良いことだと思う。

どんなに些細でも、心が満たされることは更なる幸せを呼ぶことだろう。

 

おいしいものを食べることができて幸せ。

好きな音楽を聴けることができて幸せ。

やりたい仕事ができて幸せ。

好きな人と一緒にいることができて幸せ。

家族と過ごす時間を持つことができて幸せ。

 

この世界には、私たち多くの人々にとっての当たり前を、

当たり前に感じることができない環境にいる人がたくさんいる。

人と尺度が違うのだから、他人の生きる環境など関係ないのかもしれない。

だけど、当たり前が当たり前にあることの幸せを、

そんな小さな幸せを幸せだと感じることで、

すっと肩の力が抜け、見える世界は変わるのではないかと、私は思う。

#46 GREEN / TOKIO

広い宇宙のような

母の胸のような

いつか少年のような時へ

もう二度と戻れないなら

せめて連れて行こう

               GREEN / TOKIO(作詞:HIKARI)

 

2002年にリリースされたTOKIOの26 thシングル曲。

3曲でひとつのラブストーリーというコンセプトのシングルであったが、

シングルの表題が「GREEN」であるのに、2曲目に収録されていたことが心象的で、

今でも記憶に残っている。

2002年のTOKIOのリリース曲は私の中では豊作で、花唄、GREEN、ding-dong、

どれも名曲ぞろいである。

特にGREENは緩やかなテンポで比較的高音を伸びやかに歌わなければならず、

音楽性も良い意味でジャニーズらしくなく、歌唱力やセンスを感じさせる。

 

永遠の愛を誓ったラブソングとのことだが、「愛してる」や「永遠に」など、

くさい言葉が一切使われておらず、寡黙な男性らしさを感じると共に、

言い回しが独特で、言われないとラブソングと思わない上品な歌詞が目を引く。

特に印象的な部分が上記部分で、戻れないならせめて連れて行く、

というフレーズが耳に残る。

幼い頃から長い月日を共にした二人が描かれているからだろうか。

GREENというタイトルも、

青々しい若葉や若かりし青春時代のイメージから付けたのだろう。

それともこれからの日々に花を咲かせるであろう二人のことだろうか。

 

子供の頃に一緒にいるときは、ひたすら楽しかったのだろう。

それでも人は大人になるにつれて世界の闇を知り、

その闇からうまく逃れようと考えるようになり、純粋な気持ちは失われていく。

隣にいるあの子に、子供ながらに無重力の広い宇宙にいるような楽さ、自由を感じ、

母の胸のような温かさと優しさを覚え、闇を知らず無邪気に笑い合っていたあの頃。

子供は大人になれるけど、大人はもう子供には戻れない。

戻れないのならば、そこに決別するのではなく、

その思い出と共にあなたをこの先の人生へと連れて行く。

 

人が「この人と人生を共に生きていこう」と思うきっかけは何なのだろうか。

ありふれた日常に感じる親近感なのか、ふとした時に垣間見える容姿の美しさなのか。

恋をする時のそれとは、重さが違う。

それを決断するきっかけなんて、

誰に聞いても本当のところはわかっていないのかもしれない。

「なんとなく」それが一番続く愛なのかもしれない。

遊びまわるほどの体力があった若かりし日々や、激しく求め合った日々も、

歳を取るにつれて欲も薄れていけば心も落ち着いて消え去っていく。

どんなにあの頃に戻ろうと思ったって、時を戻すことは出来ない。

「素敵な思い出」と仕舞い込むのではなくて、「あの時はこうだったよね」と、

いつでも思い出の宝箱を開けることができるその人を、

彼は人生の幕引きまで連れて行くことに、決めたのかもしれない。

#45 僕たちの決断 / Do As Infinity

「今年の暮れでスタジオが閉まる も一度集まろうぜ?」

知らないメールを開けたとたんに12年間が埋まる

「本気かな」つぶやくと会議が止まった

あの日から錆びた弦 ろくに弾けない僕だけど

それぞれ歩く道を僕らなりにあの時選んだはず

最期のアンコールはあれからずっと胸でなり続けている

       僕たちの決断 / Do As Infinity(作詞:Psycho Kawamura)

 

 2011年にリリースされたDo As Infinityの25thシングル「アリアドネの糸」収録。

一度解散した彼らが再結成し、2009年に再びリリースを始めたわけだが、

気がつけば解散する前よりも再結成後の方が活動期間が長くなっている。

近年のリリース曲はオリコン順位から見ても落ちてきてはいるが、

当初はまだ人気があり、表題曲「アリアドネの糸」はドラマ主題歌に起用されていた。

本作はそのカップリングとして収録された楽曲である。

 

夢に向かうリスナーの背中を押そうと、励ます曲はたくさんある。

しかしながら、夢を叶えられた人間よりも、

叶わずして歳を重ねている人のほうが、世の中圧倒的に多いだろう。

だから本当は、夢を追う若者に向けた楽曲だけでなく、

夢に敗れて普通の生活に身を置いている人々に向けた曲が、

もっとたくさんあっても良いのではないかと思う。

もちろん、世の中ポジティブでポップな曲が求められヒットするのは理解している。

それでも、夢は叶えるものでなく見るものだった人々へ向けた、

あの頃は輝いていたと思い出させるような「僕たちの決断」の歌詞は、

とても魅力的に感じ、夢を叶えようともせず見ていただけであった私にも、

心くすぶる内容となっている。

 

この歌詞の主人公が見ていた夢はバンドで成功すること。

メンバーそれぞれが各々の道を進むことを決め、

主人公のように普通の生活に身を置く人もいれば、

まだ夢を追ってバンドを続けている人もいた。

そんな中あるきっかけで、当時のメンバーが集まることに。

半端な気持ちで会えはしないと、距離を置いていた主人公が、

再びギターを手にしてメンバーの元へ向かう。

 

忘れてしまえるほど浅い夢じゃなかった。

僕らのあの決断。

誰もが経験する、と書かれているが、本当にその通りだ。

皆子供の頃に何かに憧れる。

野球選手、教師、アイドルや歌手、宇宙飛行士、パティシエ。

追いかけて諦めた人もいれば、夢見ただけで現実を生きた者もいる。

夢を手放す決断を、多くの人がタイミングは違えど経験している。

 

ギターを手に飛び出した主人公が、

諦めかけていた夢を叶えるような終わり方であったら、

私はこの曲をチョイスしなかっただろう。

「それぞれ歩く道は誰が正しいなんて決められない

僕らが描いた夢 時々確かめよう あの時の為に」

という歌詞で終わっているからこそ、共感したのだ。

時々思い出して、あの頃は楽しかったと、思い出に浸る。

そんな人はきっとたくさんいる。

だから、無理やり夢を叶えた結末にせず、

夢を叶えた人も別の道を行った人も、全てが間違いじゃなく、

時々そんな分岐点にいた自分を思い出してあげよう、あの時の自分のために。

そんなメッセージが込められた「僕たちの決断」に、魅力を感じたのである。

#44 芽 / NICO Touches the Walls

生まれ変わるさ何にだって

片道切符の命だもの

深く根を張って

ほら限りない大地の上へ

照らして

儚い今を何よりも

きっと世界は美しい

          芽 / NICO Touches the Walls(作詞:光村龍哉

 

2009年にリリースされたNICO Touches the Wallsの2ndアルバム「オーロラ」収録曲。

ロックバンドの中ではポップス寄りの楽曲が多い彼ら。

その中でも「芽」はスローテンポなロックバラードである。

2015年にリリースされたアコースティックアルバムにもセレクトされ、

ファルセットが際立つ珠玉のバラードへと形を変えて収録されている。

 

たった一度の人生。

一方通行で戻ることも出来ないのだから、夢へ向かう芽を出すために、

まずは根を強く張って大地が広がる光の方へ。

自分の思い描いた日々を懸命に生きよ、という力強いメッセージが込められた、

この曲の歌詞が非常に気に入っている。

真っ暗闇の土の中から、

芽を出そうと大地が広がるであろう光の差し込む方へ向かっている、

そんな情景が頭に浮かぶ。

 

ボーカルの光村が書く歌詞は、

どこか独特で他のアーティストにはない視点が多く見受けられる。

曲調はJ-POPに近しいロックではあるのだが、

曲名や歌詞は彼らならではのものが多く、

良い意味で「らしさ」を持っているバンドである。

光村の歌声・歌い方も一度聴いたら忘れられないようなオリジナリティがある。

 

そんな彼らも、長いキャリアの中でなかなかヒット曲に恵まれず、

無名ではないが大ヒット作もない、境界線の上を歩き続けている。

この曲がリリースされたのはまだデビューしたばかりの頃で、

後に「手をたたけ」「天地ガエシ」などの代表曲が生まれるわけだが、

「土の下にしっかりと土台となる根を張って、夢の芽を出してやる、

売れてやる!」のような決意が記されているようにも受け取れる。

 

片道切符の命。

私たちは何故生かされているのかもわからずに、やがて死を迎え、記憶を失う。

だからこそ、やりたいことをやらなくちゃ、という曲をたくさん耳にしてきた。

まさにその通りなのだ。だから数多くの曲が存在する。

私たちは今、どんな芽を出そうとして、

どんなビジョンを描いて日々を生活しているのだろう。

何のために根を張れば良いのだろう。

夢があることは素晴らしい。羨ましいことだ。

自分と言う名の花を、咲かせることができるのだろうか。

夢のない人間にとってみれば、夢に向かっている人が眩しく見えるものだ。

 

まずは何に向かいたいのか、イメージしなければならない。

そして、そのためには何をしなければならないのか。

今からだって、何歳だって、命ある限り夢を持つことは出来る。

時間の波に乗っている限り、私たちは必ず何かに向かっているのだから。

道の先を見据えよう。行きたい場所に辿り着く道を選ぼう。

命尽きるまでのこの儚い時間に、光を照らすことが出来るように。

#43 それでしあわせ / chay

しあわせのありかはきっと自分の心の真ん中

誰かがくれることを待っていちゃだめなの

しあわせはちゃんと自分をまっすぐに愛する気持ち

そんな私のままで今を歩きたいの

             それでしあわせ / chay(作詞:chay / jam)

 

2016年にリリースされたchayの8thシングル曲。

テラスハウスへの出演や月9主題歌を手掛けるなど、

様々な場面で注目されている割になかなかヒットに恵まれないchay。

近年でも年末の歌番組で見かけることがあるが、

自分の歌ではない歌を歌っているシーンをよく目にする。

楽曲のリリース数自体もそんなに多くはないが、そんな中でも今作は、

非常にハートフルで前向きな歌詞が印象的で、

私の中では非常に評価の高い楽曲となっている。

 

まずこの曲を聞いて耳に残るのは、しあわせについて、

「誰かがくれることを待っていちゃだめ」というフレーズ。

ちゃんと自分の心の真ん中にしあわせはあるんだ、

気付いていないだけで、生まれたときから必ず授かっているものなんだ、

そんなメッセージが、聴いていて心温まる。

 

そして、様々な人生の過ごし方、選択が受け入れられる現代。

たくさんのラブソングが男女の愛を歌っている中、

この曲にはワンフレーズ、今の時代だからこそ書けたであろう歌詞が存在する。

「愛し合えることは素敵 もちろんひとりでも素敵」

生涯独身人口が増える現代で、

ひとりで仕事と戦っている人、家族を持たず自由を選択した人、

そんな人々へも敬意を表している部分が非常に共感できる。

「恋愛」がテーマではなく、あくまで「しあわせとは」がテーマなのである。

 

更には、今ひとりを感じている人への希望を描くことも、忘れてはいない。

「気がつけばそばにいて笑ってる、そんな誰かもいつか来るでしょう、

そんな私もいつかいるでしょう」

家族がいて、愛し合っている人はもちろん、しあわせだろう。

独身を選択し、自分のやりたいことに目を輝かせている人も、しあわせだろう。

では今、家族もいない、恋人もいない、友達もいない。

そんな人はしあわせがテーマの歌なんて、聴きたくないと思うだろう。

でも曲の最後にはちゃんと、そばで笑っている人がいつか来る、

そんなメッセージが添えられている。

 

あなたはどんな時にしあわせを感じるか。

しあわせに、してもらうのではなく自分でなるものだ。

愛し合える人がいるのは素敵だし、ひとりだってもちろん素敵。

今、そんなしあわせを感じることが出来ていない人にも、

気がついたら誰かが隣にいて笑ってる、そんな瞬間が訪れるよ。

曲の始めから終わりまで、どんな人にでも当てはまるよう描かれたこの曲は、

必ず何かを感じさせたり思い出させることができるような、

そんな曲なのではないだろうか。

#42 少年 / Something ELse

初めて彼女の香を知った夜は

欲しかった全てを

手にした気がしたんだ

             少年 / Something ELse(作詞:今井千尋

 

2003年にリリースされたSomething ELseの14thシングル「少年/笑いたい」収録曲。

1998年にリリースされた「ラストチャンス」で知られる彼らの、

解散前晩期のリリース曲である。

大ヒット曲故にラストチャンスばかりが知られているが、

シングル16枚、オリジナルアルバムも7枚ほどのリリースがある。

 

この曲を始めて知った当時、私はまだ学生であったが、

この歌詞が非常に印象に残り、今でも時々頭の中で流れてくる。

愛しい人を抱いている瞬間が一番幸せだ、なんて言葉の意味を、

理解できるはずも無かったまさに「少年」時代の私でも、

「すごいこと歌詞に書くなぁ」と漠然とインパクトを受けていた。

しかしながら、変にいやらしくなく綺麗な言葉でまとめ上げており、

でもしっかりとイメージを映し出す表現の仕方が秀逸だと感じた。

 

好きな女性と付き合うことが出来て、初めての夜を迎えたとき、

高揚感を得る男性は少なくは無いだろう。

女性にとってもそれは同じなのだろうが、男子的な目線のこの歌詞は、

まさに少年が男になった瞬間の気持ちを描いたような、

男性人から共感を得られるような歌詞となっている。

「香」という言葉のチョイスも、歌詞らしくて非常に良い。

 

身体の関係があってこそ、その人を手にしたという気持ちを実感したり、

愛し合っているのだと確認しあう、大人の恋愛。

皆、いつかは大人になるのだから、そんな恋をする時が必ず来る。

ただあの子はあの子が好きらしいと噂が回ってキャッキャしていた時代には、

戻ることは出来ないだろう。あの頃はあれが恋愛の全てだったのだから。

 

「純粋な恋」が何をどう定義するのかはわからないが、

それが子供時代の恋愛を差しているのだとしたら、

その世界からはもう飛び出してしまっている。

「少年は消えていった」という歌詞で幕を閉じるこの曲にも、

そんな意味が込められているのではないだろうか。

 

「あの頃僕らは時間を無限と思った」

小中学生時代がものすごく長かったような、

そして社会人になるなんてずっと先だと思っていたような、

人生をゆっくり歩んでいる感覚をいつからか失い、

私の少年時代もいつしか消えていってしまった。

今や時間は光のように早く流れ、

あっという間に一年が終わってしまう感覚を覚えた。

それでも大人には大人の良さがあって、少年に戻りたいとは思わないし、

懐かしんで思い出話が出来ればそれで良いと感じる程度。

広い世界を知ってしまったら、狭い世界には戻れない。

皆が通過し感じた当たり前のこの感覚を、彼らは優しく、

そして鮮やかな言葉で歌い上げているのだ。