#55 Water Me / BONNIE PINK

なぜだろう

なぜこんなにも愛する気持ちが

時には過ちで

時には醜くて

時には情けなくて

                   Water Me / BONNIE PINK

 

2007年にリリースされたBONNIE PINKの23rdシングル表題曲。

A Perfect Skyで再ブレイクして以降にリリースされた楽曲で、

花の気持ちが言葉になっている歌詞が印象的な珠玉のバラード曲である。

 

愛は、人間に最も必要なものであり、人間を最も狂わせるものである。

ただ恋愛をして結婚をする、いわゆる普通の愛だけじゃない。

悲しい愛や苦しい愛がこの世には溢れている。

それは時に抱いてはいけない過ちの愛であり、

醜く翻弄される愛であり、情けなどかけられぬ禁断の愛であったりする。

 

浮気や不倫。

この世の中の至る所に蔓延っているであろう過ちは、

時に人を狂わせる。

純粋に愛しているのに、相手が誰かのパートナーであるが故に、

冷たい視線を浴びてしまう。

恋愛とは違う、身体の関係だけを持つ者だっている。

 

世間的には受け入れられつつある同性愛。

肯定的に受け入れているつもりになっている世間にうんざりしていることだろう。

ドラマやアニメなどで少しずつ存在がメジャーになっているだけで、

現実の世界では口に出来ずに苦しんでいたり、

好きになった相手が同性愛者でなければ叶わぬ恋に胸を痛め、

性同一性障害のように心と身体の不一致に苦しむ人だっている。

 

今まで普通に恋愛して生きてきた人にだって、

何かのきっかけでそれは訪れる。

人間、誰しも経験することなのかもしれない。

恋人がいるのに他の人にときめいてしまったり、

心を奪われてその先へ進んでしまったり、

迫られて体の関係を持ってしまったり、

恋愛感情を持たずに性の関係として遊んでしまったり。

 

恋愛は、本当に美しいものなのだろうか。

愛するとは、いったい何なのだろうか。

大切にしたいという気持ちと、性欲を満たしたいという気持ちと、

幸せにしたい、大好きだという気持ち。

本当にひとりの人にしか向けてはいけないものなのだろうか。

 

花は、与えられないと生きてはいけない。

私を見て、水をちょうだい。

毎日同じ花に水をやっている人間は、

枯れそうになっている花を見たら、そこにもきっと水をやる。

水をもらったことがある、愛を知っている人は、

水を、愛を求めている人にきっと優しくなれるし、手を伸ばしてしまう。

愛する気持ちなんてきっとそんなものだ。

過ちを犯す種であり、醜く愚かな部分を露にする種であり、

情けない程に人を狂わせる種なのである。

#54 桔梗が丘 / 平井堅

鍵をかけたドア越しにこぼれる

あなたの泣き声をただ聞いてた

忘れないで何かに勝つときは

負ける人の涙があることを いつでも

正直言うと私だって

胸を張れるような大人じゃなくて

声を上げて苛立ちをぶつける夜もあった

本当にごめんね

                   桔梗が丘 / 平井堅

 

2013年にリリースされた平井堅の配信限定シングル曲。

本人の故郷の地を曲名にし、母へ向けた感謝の言葉が綴られている。

優しいメロディや伴奏と平井堅のファルセットが織り成す、

心温まるミディアムバラードである。

 

親は、子供の前で泣こうとしない。

子供を支えていく決意の現われなのか。

不安にさせまいと必死なのか。

私の親も、子供の前で簡単に泣くような親ではなかった。

 

父は家族から感謝の言葉を掛けられなくても、毎日会社に向かった。

自分の子供にも興味を示さず、かと言って休みの日を趣味に費やすでもなく、

彼の人生の楽しみは何なのだろう?

子供ながらにそう思っていた。

父が泣いた姿を見たのは、祖母、つまり父にとっての母親が亡くなった通夜、

たった一度きり。

 

母はパートをしながら同居していた祖母、母にとっての母親の介護を、

祖父と共に10年近く続けていた。

介護をしていた祖父のほうが急に弱り果て、先に亡くなってしまったが、

それでも母は私たち子供の前では涙を目に溜める程度だった。

しかし母は両親を亡くしてから涙もろくなった。

動物の死や親子の絆などのストーリーをテレビで見るとすすり泣くようになった。

祖父の思い出話を私にしながら声を震わせて涙を流した。

母の泣いた姿を見たのも、そんなものだ。

 

きっと本当は声に出して泣きたいくらいに悲しかったのに、

私の前では両親はそれをしなかった。

私も、祖父母が亡くなり、共に生活した家族を亡くす悲しみを知った時、

風呂場でシャワーを流しながら、シャワーの音に隠れて泣いたものだった。

悲しければ悲しめば良いのに、肩を寄せ合えば良いのに、

互いにそれが出来ずどこかで強がっていた。

親子とは不思議なものだ。

近いのに、遠く感じることもある。

 

そしていつの間にか立場は逆転してしまう。

小さい頃は親を必要とするのに、大人になると親元を離れ、

親は子供の世話をしていたはずなのに、年老いて今度は自分が介護を必要とする。

子供はいくつになっても敏感で、

白髪が増えたり、髪の毛が薄くなったり、痩せてしまったり、

親の衰えにいち早く気づくのに、認められなくて目を逸らす。

うちの親に限って、なんてどこかで思っている。

 

いつかあなたが、空を翔く日が来ても。

この歌詞は、子育てに開放され自由の身となった親のことを言っているのか、

亡くなってしまう親を歌っているのか。

いずれにしても、言葉では恥ずかしくてなかなか伝えられない代わりに、

いつでも心を通わせることが出来る環境を作っておいてあげることは、

立派な親孝行なのだと思う。

定期的に親には顔を見せよう。

どんな生活を送っているのか話してあげよう。

きっとそれだけで親は喜び、また子供のいないところで密かに涙を流す。

互いに思いやる、素敵な関係なのである。

#53 不協和音 / 欅坂46

不協和音で既成概念を壊せ!

みんな揃って同じ意見だけではおかしいだろう

意志を貫け!

ここで主張を曲げたら生きてる価値ない

欺きたいなら僕を抹殺してから行け!

ああ 調和だけじゃ危険だ

ああ まさか自由はいけないことか

人はそれぞれバラバラだ

何か乱すことで気づくもっと新しい世界

                 不協和音 / 欅坂46(作詞:秋元康

 

2017年にリリースされた欅坂46の4thシングル表題曲。

秋元康プロデュースのアイドルグループながら、

激しいサウンドとダンスにストレートで生々しい歌詞の曲を歌う、

他のアイドルグループに比べると異色のグループである。

 

子供の頃から、私は周りを見て意見や行動を決める人間だ。

あの子は何をしてあげれば喜んでくれて、

あの子には何を言ってあげれば自分を嫌いにならないでいてくれて、

親や先生、大人には迷惑を掛けずに言うことを聞いておくのが一番だと、

そんなことを考えて生きてきた。

だから、大人になった今でも我を通すのは苦手だし、

心を許した相手にだって、したいこと、行きたいところ、

自分の欲を先にひけらかすことはない。

 

そんな自分はつまらない人間だと思っている。

本当に戻れなくなる前に、まだ若い年齢と思われている今のうちに、

やりたいことを見つけたり、なりたいものになろうとすべきなんだろうと、

そんなことを心の中で思いながらも、普通の毎日を坦々とこなしている。

きっとどこかでリスクを恐れて、平凡な毎日を手放すのが恐くて、

今の生き方から逃げることが出来ないでいる。

 

勿体無いんだ。

親の言うことを聞いてそれなりに勉強をして、

学校に通って、良い会社に入って、友人や恋人にも恵まれて。

何十年と我慢したからこそ得られたものを、失うことが。

恐いんだ。

心の声を抑えて「正しい」とされるレールを選択して過ごしてきた時間を、

自分で否定してしまうことが。

 

だから、欅坂46のような若い世代の歌手が、若い世代に向けて訴えかけるその言葉が、

親の囲いの中で、学校という狭い世界で生きる同世代の人々に、

届いてくれていたら良いなと切に願う。

大人になって気づくのだ。

仲間はずれにされるのを畏れて、周りに同調ばかりして、

自分を押し殺していたことの空しさを。

人はみんな違って当たり前なのに、

違うことに指を差されることが恥ずかしいことだと思っていたことの愚かさを。

 

でも、その世界しか知らない若い世代にとって、現実に不協和音を響かせることに、

どれ程勇気が必要で、その後どれ程強くあり続けなければならないか。

きっと難しい。

強い心を持って発したとしても、冷ややかな目やいじめという現実に、

押しつぶされてしまう可能性のほうが往々にしてあるのだ。

だから、きっと私のような大人がたくさん世に溢れていく。

 

綺麗事を言うのは簡単。それを書くのも歌うのも簡単。

それを受けて実際に行動するためのエネルギーがどれ程必要なのか、

行動できなかった私には計り知れない。

でも、もし何か少しでも自分の世界を変えることが出来た人が居てくれたら。

人生捨てたもんじゃないって思わせてくれた何かがあったなら。

私が子供の頃もらうことが出来なかったその勇気を、

誰かに与えることが出来ていたのなら、

アイドルグループだって捨てたもんじゃない。

学生時代に欲しかった言葉を、学生時代に聞けていたら、

何か心動いたかもしれないな、なんて、

この曲を聞くとぼんやり考えたりしてしまう。

#52 遥か / GReeeeN

「まっすぐにやれ よそ見はするな

へたくそでいい」父の笑顔と

「信じる事は簡単な事

疑うよりも気持ちがいいね」母の涙

さようなら

また会える日まで不安と期待を背負って

必ず夢を叶えて笑顔で帰るために

                       遥か / GReeeeN

 

2009年にリリースされたGReeeeNの11thシングル表題曲。

2007年のデビュー以来、素顔がわかる形でのメディア露出はなく、

そのスタイルは2019年現在まで一貫している。

一時よりは落ち着いたものの、露出がないながら今もなお人気を博しており、

ハイトーンボイスと低音ボイスの音域の広い楽曲を歌いこなすのも魅力である。

 

本曲は夢を掴む為に実家を出て新しい世界へ飛び込んでいく若者を主役にした楽曲。

そこへ向かう途中に父や母から言われた言葉を思い出したり、

友人から渡された手紙を読んで思いにふけているシーンが描かれていて、

曲の始めから終わりまでの詞の世界観が非常に読み取りやすく、

若者に指示されている理由のひとつでもある。

 

親元を離れて初めて親のありがたみがわかる、と言う言葉をよく耳にする。

学生時代、一度も親元を離れたことがなかった私は、

「いざその時になれば、なんとかなるもんでしょ」としか思っていなかった。

実際に親元を出たのは社会人になり、転職をしたタイミングであったため、

ある程度大人になってからの独り立ちだったこともあり、お金にも困らなかったため、

結果、なんとかなるものではあった。

しかしながら、寮に入ったり大学入学のタイミングであったり、

学生時代に実家を出ていたらと思うと、

夢を追いかけてひとりで別の世界に飛び出す若者は、

なんて強いパワーを持っているのだと感心する。

 

辛くなったとき。寂しくなったとき。

誰の言葉を思い出すだろうか。

何か言葉が欲しくなったら、誰に連絡を取るだろうか。

あの時、あの言葉があったから。

きっとそんな言葉を胸に刻み込んでいる人はたくさんいることだろう。

 

親は、社会人になった自分がこれまで経験してきたような世界を乗り越えながら、

自分を育ててくれたのだと思うと、自分が親になったときにも、

今目の前を見ている子供に、

その先に広がる未来を見据えた言葉を投げかけてしまうかもしれない。

それをぐっとこらえて、子供の背中を見送る親の気持ち。

辛いことがあの子に降りかかりませんように。

平凡でいいから、幸せな人生を遅れますように。

きっと多くは望まず、そんなようなことを願っていたのではないだろうか。

 

へたくそだっていいから、まっすぐに生きろ。

人を疑うよりも信じてみなさい。

この曲の主人公に掛けられた言葉は、しっかりと胸に届き、

新しい世界に「いざ行こう」という歌詞でエンディングを迎える。

励ましの言葉は人を強くする。

ひねくれず、ネガティブな言葉よりもポジティブな言葉を掛けてあげられる、

大人でありたい。

#51 Memorial address / 浜崎あゆみ

胸騒ぎとともに眠りについた夜更け

とても悲しい夢を見ていたのを覚えている

その朝予感は沈黙を破るように

鳴り出した電話で現実のものとなった

心に消えない傷跡を残したまま

あなたは一人星になった

さよならね

もう二度と会えない場所へ行ったのね

永遠の別れの冷たさを受け止められずに

聞かせてほしかった

嘘で構わないから

あたしはあなたに確かに愛されてたって

たった一度でいいから

                   Memorial address / 浜崎あゆみ

 

2003年にリリースされた浜崎あゆみの1stミニアルバム「Memorial address」表題曲。

ファンからも人気の楽曲で、ベストアルバム「A BEST 2 - BLACK-」にも、

シークレットトラックとして収録されている。

誰もが直面する死と別れをテーマにした歌詞が印象的なロックバラードである。

 

大切な人の死は、いつか必ずやって来る。

病気を抱えて衰弱していく様を目の当たりにし、

予期することができて見取ることも出来れば、

それは突然にして訪れることもある。

 

私たちは毎日を当たり前と思って生きている。

今日一日は、大勢の人にとっての普通の一日であって、

普通の一日は何かのきっかけで忘れられない一日に変わる事だってある。

毎日を生きていく中で、

いつか訪れる大切な人の死が今日来るだろうなんて、考えている人はそういない。

もう長くないと言われていたって、一日でも長く生きていてほしいと願うばかりだ。

 

今、自分の周りの誰かが突然亡くなってしまったら。

もしくは自分がこの世から旅立つことになったら。

 

もう二度と会えない場所に行ってしまう。

それは時として残酷で、わだかまりを残したまま、永遠となってしまう。

いつか伝えられれば良いやなんて思っていたことは、永遠に伝えられない。

いつか仲直りできればなんて思っていたら、そのままの別れになってしまう。

 

誰かが死ぬことを想像なんてしなくていい。

大切なのは、「ありがとう」と「ごめんね」を、ちゃんと伝えること。

言えないままのさよならにならないように、

気持ちはちゃんとぶつけておかなければいけないということ。

あの人は大丈夫なんて、なんの保証もない。

 

どんな別れでも、悲しいことには代わりないけれど、

家族に、恋人に、友達に、同僚に、たくさんお世話になった人たちに。

伝えておきたいことは、ちゃんと伝えておこう。

#50 Tea for Two / 東方神起

風に揺れる午後の光

テーブルに乗せたTea for Two

僕はソファに横になって君を見つめている

何だか歌っているみたいに繰り返し読んでるレシピ

どんなものが出来上がるの?

レモンとバニラの香り

君が作ってくれるならそれだけでホント嬉しくて

ずーっと続くように

               Tea for Two / 東方神起(作詞:H.U.B.)

 

2009年にリリースされた東方神起の28thシングル「Stand by U」に収録されている、

カップリングナンバー。

何気ない日常にこの上ない幸せを感じ、

自然と笑みがこぼれるシーンが目の前に広がる歌詞と、

優しいメロディーに彼らの柔らかなハスキーボイスが光る、

至極のミディアムバラードである。

 

5人時代はハーモニーを強みとしている傾向が強く、

バラードやミディアムバラードのリリースの割合が多かったためか、

代表曲もスローテンポの曲が多い。

また、日本人が作詞作曲している曲が多く、

J-POPとして耳馴染みが良い曲ばかりなのも印象的である。

対して2人体制になってからはK-POP色が強くなり、

ダンサブルな曲が目立ち、お洒落さを売りにしている傾向がある。

K-POPアーティストとしては唯一と言えるほど長い間、

今も昔もそれぞれ魅力を持っているからこそ人気を保っている。

世間的にA面のStand by Uは彼らの代表曲としてヒットし記憶されているだけに、

当時シングルを手に取った人は多く、

ファンでなくてもこの曲を耳にしたことがある人は、

マイナー曲の中では多いのではないだろうか。

 

風に揺れる午後の光

このひと言だけで、ありふれた毎日の中のワンシーンを思い浮かべる。

そして、情景が浮かぶように言葉が続いていて、

聞き始めから曲の世界観に吸い込まれる。

繰り返しレシピを声に出して読むほど、料理は得意ではない彼女が立つ台所からは、

レモンとバニラの良い香りが漂う。

きっとこの後うまく作ることが出来るのだろう。

紅茶をお供にテーブルに座り、おいしいと言いながら笑い合うひと時を想像させる。

 

人はないものねだりをする。

だから「平凡」を手に入れている大半の人は、別の目標や夢を描く。

普通が一番なんて言いながら、心ではもっともっと上にと願っていたり。

平凡に幸せを感じられたら、それだけで毎日はもっと輝くのに。

見えているかい?君の目の前に広がる平凡の中に煌く幸せが。

そんな風に言われている気持ちになる。

2番に続く歌詞は、明日で世界が終わるなら明日もこうして笑いたい。

主人公の彼が最後の瞬間に選ぶ時間は、そんな時間なのだ。

 

私は、そしてリスナーは最後の瞬間に今日という日を選ぶだろうか。

最後なら、もっとこうしていたいとか、どこかへ行きたいとか、

何も言われずに聞かれたら考えてしまうかもしれない。

つまらない人生だったなんて、ため息をつくかもしれない。

でも、偉業なんて成し遂げていなくていい。

世間が認める成功なんてしていなくたっていい。

あ、幸せだな。

そう感じる瞬間が日々に転がっている人こそ、素敵な人生を歩んでいるのだと思う。

もちろん、日々に感謝をしつつ更に上を目指して努力する人も尊敬する。

私は東方神起の曲はそんなにたくさん知らないが、

素敵な歌に出逢えたなたと思うし、これからもそんな歌に出逢えることを願っている。

#49 気分爽快 / 森高千里

まさかあなたが彼を射止めるなんてさ

まいったな 私は正直ちょっぴりショック

人生だわ これも巡り合いなのね

ありがとう ちゃんと話してくれて

                        気分爽快 / 森高千里

 

1994年にリリースされた森高千里の22ndシングル曲。

彼女の代表曲のひとつであり、

歌手活動再会後も音楽番組で歌唱するシーンをよく目にする。

歌声や声の伸びだけでなく、ルックスも含めかなりキープされており、

今テレビで歌唱曲を聞いても聞き苦しさなどない、

若々しさを感じさせるベテラン歌手のひとりである。

 

同じ人を好きになった友人から、

彼を射止めて付き合うことになったことを打ち明けられたシーンを描いた歌詞。

現実に起これば喧嘩や修羅場のようなシーンとなる可能性も大いにあるが、

最初から最後までショックな気持ちを漂わせながらも、

友人の背中を押しつつ「おめでとう」と喜びの言葉を掛ける、

そんな優しさと切なさが複雑に入り混じった感情が鮮明に感じ取れる歌詞が、

非常に印象的で聞いていて心穏やかになれる。

 

自分の好きな人が他の人と、

それも自分の友人と付き合うことになってその報告を受けたら、

どんな気持ちになるだろうか。

おめでとうと心からの祝福はできないかも知れない。

本作品の主人公も、心からの言葉ではなかったかもしれない。

でも、悔しさや悲しさよりも友人との関係を大事に出来るような、

素直に友人の幸せを祝福できる心を持つことが出来れば、

きっとその人にも後から素敵な人との人生が待っていると信じたい。

類は友を呼ぶなんてありきたりな言葉を使いたくはないが、

素敵な人には素敵な人が、きっと集まるものだと思う。

 

そう思ったら、恋愛に限らず今目の前の人生で、

素敵な事が起こるようにと日々を邁進することが出来る気がする。

悪いことをすれば悪い人が寄ってくるし、

嘘をつけば嘘をつかれるのだから。

 

それぞれの社会に生き残る為に必死になっている人が多い現代。

清らかな心で生活できるような平和な世の中ではないのかもしれない。

それでも、ほんの少しだけでも、希望は忘れずに持っていたい。

世間に溢れている綺麗事をリアルに重ねることができなくたって、

すっと力が抜けるような爽快な気持ちに、一瞬でもなれるのであれば、

まだ心は廃れてはいない。それでいい。