#18 黄昏ロマンス / ポルノグラフィティ

 

いつの日か年老い

終わりを感じながら

公園のベンチで思い返してみる

君にとっての幸せがいったいどこにあったのか

ひとつくらいは増やせてあげられたかな

        黄昏ロマンス / ポルノグラフィティ(作詞:新藤晴一) 

 

2004年にリリースされたポルノグラフィティの16thシングル曲。

ストリングスなどを盛り込んだ心温まるミディアムバラードである。

当時年末番組でも複数回披露されており、

記憶に残っている人もいるのではないだろうか。

夕日をイメージしたであろう伴奏が放つ温かさに加えて、

語尾がしぼむような歌い方が哀愁をも漂わせている。

 

そんな哀愁を最も感じる歌詞がこの部分。

「終わりを感じながら」という一言が、

命の終わりを悟った人間の物思いに耽っている姿を連想させる。

 

人は真剣に人生を振り返ることはあまりしない。

ゆっくり過去を思い出す時間もなければ、

勉強のように定期的に復習して記憶に刻もうとすることもない。

誰かと話しているときはその人を連想する過去ばかりが浮かんでくるし、

そればかりか人生に起こったことの大半を記憶の奥底にしまっていて、

そう簡単に引き出しを開けることも出来なくなっている。

それが死を覚悟したとき、これまでの楽しかったことや悲しかったこと、

ありとあらゆる思い出が走馬灯のように浮かび上がってくる。

そんな時一番に思った、共に歩いてきた「君」へ。

私と生きて、幸せだっただろうか。

公園で空を眺めながら考えている老人の姿が目に浮かぶ。

 

人は何故他人と結婚するのだろう。

寂しさを紛らわすためか。生活を楽にするためか。血を繋ぐためか。

いや、理屈ではないのだろう。

しかし、一緒にいることが自然で、空気のようになくてはならない存在が出来て、

その素晴らしさやありがたさを日常の中に紛れて忘れてしまっている。

その時々は嬉しくて幸せなイベントを迎えて歓喜しているのに、

時間が流れて生きて来た道のりを振り返ると、

「あー、あの時は嬉しかったなぁ」なんて、ほっこりと思い返す程度になっている。

そうやって人は次へ次へと新しい刺激や喜びを求めて生きていく。

 

振り返ろう。

大切なあなたに、歳を取っても当時の気持ちを忘れないくらい、

飛び切りの喜びと笑顔を与えることは出来ているか。

確かめよう。

大切なあなたが、自分を選んでついて来てくれた理由を。

未来への期待も大切だが、過去を忘れてはならない。

二人が歳を取ってこの世を去るときに、

あなたと長い間生きてこられて良かったと、思えるように。