#21 誰かの願いが叶うころ / 宇多田ヒカル

 

誰かの願いが叶うころ

あの子が泣いてるよ

みんなの願いは同時には叶わない

               誰かの願いが叶うころ / 宇多田ヒカル 

 

2004年にリリースされた宇多田ヒカルの13thシングル曲。

全盛期のR&Bから曲の方向性に変化が現れた頃の曲で、曲名も日本語となっている。

14年も前の曲になるが、どちらかと言えば近年のヒット曲「花束を君に」や、

桜流し」などの曲に似た方向性の曲調となっている。

 

以前にも綴ったことがあるが、人生は良いことも悪いことも半分ずつだ、

と聞いたことがある。

「幸せだ」と思った瞬間は、目の前も、頭の中も、全てが輝いている。

毎日が楽しいと思っている人は、すべてのことを良く考える。

そんな時、必ず悲しんでいる人がどこかにいる。

今、大切な人が命を落として絶望の淵にいる人、

事業に失敗し金も尽きてどん底にいる人。

 

こんなことを考えてしまっては、心の底から幸せを感じて喜べなくなってしまうが、

自分の笑顔は誰かの悲しみの裏返しなのである。

誰かが不幸を感じているから、自分は幸せを感じている。

そしてその逆もそう。

自分が辛いと思っているときに、幸せを感じている人はたくさんいる。

しかし、それを頭の片隅にでも理解していれば、

今の幸せがどれほど大切なものなのか、ありがたいことなのか、

わかる気がしないだろうか。

幸と不幸の浮き沈みから一旦離れ、平凡の中にいることを、

幸せだと思う人がたくさんいるように。

 

みんなの願いは同時には叶わない。

誰かが受験に受かれば落ちた人がいるように、

離婚した人がいれば入籍した人がいるように、

世界は喜びと悲しみの無限ループで回っている。

自分が今どこにいようと、必ず逆の環境は人生に取り巻いてくる。

幸せなことの尊さに気付かずにいる人へ、その喜びの影に潜む摂理を、

この歌詞は訴えているように私は感じる。