#25 深呼吸の必要 / My Little Lover

 

独りの心を感じたならもっと

あなたの気持ちを分かってキュンとなった

あなたへの道を回り道してるその途中で

その途中で

          深呼吸の必要 / My Little Lover(作詞:小林武史) 

 

2004年にリリースされたMy Little Loverの16thシングル「風と空のキリム」収録曲。

10周年記念シングルとしてリリースされた今作は、

全盛期とは異なり売り上げこそ低いものの、

収録曲「深呼吸の必要」はダブルタイアップ曲としてパワープレイされた。

akkoの優しく透き通る歌声と、曲中に広がる青い空と海のイメージがマッチし、

目を閉じれば景色が広がる美しい楽曲となっている。

 

青い海の先、飛沫が跳ね上がり、行こうと船がうなりを上げてる。

遠い目で海を眺めて想い馳せている主人公が、たったこの数フレーズだけで、

鮮明に浮かび上がるのだから驚きである。

この曲中で私が最も惹かれている部分でもある。

 

深呼吸の必要、というタイトルは主題歌だった映画と同一であるため、

その映画のために書き下ろされたと考えられるが、非常に印象的な曲名である。

息を吸うことは当たり前。あなたは空気のよう。

そんな例えをする曲や言葉はたくさん耳にしてきた。

それとは違う。一息つくことは大切。

そして落ち着いた心は、あなたを思い出す。

あなたが大事だったと、あなたを思っていたと、

そんな過去に夢中になっていた恋愛を思い出している曲ではあるのだが、

今は遠距離なのであろう。

落ち着いてからもふとあの頃を思い出す、歳月を重ねた二人の恋愛歌である。

 

空や海を見て深呼吸をし、

落ち着いた心がふと独りでいることの寂しさを感じ取ったとき、

遠くにいるあの人の独りでいる気持ちはこんな感じなのかと、胸を刺される。

あなたへの道を回り道してるその途中で。

最後の最後で、「あぁ、逢いに行っているのか」と、心が温まる。

もしかしたら「あなた」は亡くなっているのかもしれない。

頑張って生きている、私もそのうち逝くのだけど、

この世界で今を生きているから、もう少し天国で待っていてね。

そんな曲にも取れるのだから、なおさら曲を聞いている心はキュンとなる。

 

深呼吸をしてみよう。

一番に思い出す人は、顔が浮かぶ人は誰だろう。

その人は今何をしていて、どんなことを思っているのだろう。

会えない場所にいる人に、いつか会えるように、

遠く離れている人に、会いに行けるように、

心はいつまでも忘れない。

色々な苦難を乗り越えながらも日々あなたへの道へと向かっている。

今日もその途中なのだ。