#39 影踏み / 一青窈

いつの間にか大きくなっても

僕よりうんと幸せがいい

いつからずっと強くて弱いの

君は知ってて

同じ空みてくれてたの

                   影踏み / 一青窈

 

2005年にリリースされた一青窈の6thシングル曲。

もらい泣き、ハナミズキとヒットを飛ばした後のリリース曲と言うことで注目された。

彼女の歌詞は独特なものが多く、唯一無二なものが多い。

その中でも、影踏みは親と子を描いた比較的読み取りやすい歌詞となっている。

 

子供はいつの間にか大きくなる。

気付かないうちに知らない言葉を覚えたり、恋をしていたり、

親の知らないところでもどんどん成長する。

子供の幸せを一番に考えて仕事を頑張っている親が、

その仕事のせいでそんな成長の瞬間ひとつひとつを見逃している。

皮肉なものだ。でも、それが生きると言うことであるし、

子供もまた、親を頼らずとも多くのことを学び、自分の世界を生き始める。

 

幼稚園や学校に通い始めれば、なお親の目から離れてしまう。

親は、子供の成長を喜ぶと共に、大きくなっていく我が子を見て、

時に寂しさも感じることだろう。

やがて結婚し家を出て行ったり、選択した進路や仕事の都合で親元を離れる。

それまでの時間は何年何十年とあったはずなのに、

あっという間に感じて喪失感を覚える。

 

それでも、離れていっても、

親はずっと親で子はずっと子なのである。

いつの間にか大きくなってしまっても、

僕よりうんと幸せでいてくれと願う親心を綴ったこの歌詞は、

これから成長していく我が子への希望と、

いつか離れていってしまうであろうその時を思い描いた切なさが、

入り混じっているようで、何とも言えない気持ちになる。

 

いつから自分は大人だったのだろう。いつまで子供だったのだろう。

年齢だけで判断できることではないような気がする。

二十歳をとうに超えていても、実家に帰れば子供のような。

子供がいなくても社会で働いていれば大人のような。

親になって初めて大人になるような。

まだ子供でいたいと願う気持ちや、早く大人になりたいと思う気持ち。

人間の心とは、とても複雑なものである。

 

それでもいつの間にか、時間は過ぎる。

自分では気付かないうちに、心も成長していたりする。

子供の成長なんて尚更だ。

だから、今この瞬間を大切に。

生きると言うことは人間にとって一瞬だ。

見えている世界は、常に変化を続け過去になっていく。

時間を共に過ごすことの大切さを、私たちはちゃんと理解して、

短い人生の中の一瞬一瞬の奇跡を心に刻み、

喜びや悲しみを味わわなければ、勿体無いのである。