#40 Lemon / 米津玄師

戻らない幸せがあることを

最後にあなたが教えてくれた

言えずに隠してた昏い過去も

あなたがいなきゃ永遠に昏いまま

きっともうこれ以上

傷つくことなどありはしないと

わかっている

                     Lemon / 米津玄師

 

2018年にリリースされた米津玄師の8thシングル曲。

この曲が2018年の顔と言っても過言ではない。

配信ダウンロードでは100万回を突破しているメガヒット曲である。

ドラマの世界に合わせ、死をテーマにした楽曲となっており、

彼が持つ独特の闇の世界観と「死」というテーマが非常にマッチしている。

 

今の時代、音楽はCDの売り上げだけではなく配信や動画視聴など、

様々なデータを元に「ヒット」が生まれる。

しかし、今更ではあるがLemonに関してはダウンロードではなく、

DVD付きCDを購入することをお勧めする。

もともと菅田将暉とコラボした楽曲「灰色と青」が大好きな私は、

どうしても二人の歌唱シーンが収録されたDVDを見たくて購入したのだが、

その他にも代表曲のライブシーンが多く収録されており、

シングルの価格で購入するにはもったいないほどの充実した内容になっているのだ。

これに関してはお勧めしている記事を何度も見たことがあるが、同感である。

 

この人がいなくなってしまったら、もう生きていけない。

そんなことを思えるくらいの人に出会ったことはあるだろうか。

あなたを失う以上に傷つくようなことなんて起こりはしないと、

思えるような人に。

自分の心の深い闇を話せるような人にはもう出逢えないし、

あなたがいなくなったら、あなたといた幸せは戻りはしない。

そんな絶望がこのフレーズからひしひしと伝わってくる。

そして、家族や友人、恋人、大切な人たちのことが思い浮かび、

いつかそんな日を自分も迎えるのだろうと、恐ろしくなる。

 

そんな昏い歌詞の中でも、対比として出てくる「光」という言葉。

今でもあなたは私の光。

亡くなった人は心の中で生き続けると言うが、

時が経ち、仕事や恋愛、たくさんのことで埋められていく頭や心にも、

必ずその人の記憶が入る隙間は残されていて、

ふとした瞬間に無意識にその人が思い浮かぶ。

埋もれた記憶の中でも亡くなった人はずっと輝いていて、

どんなに暗くきつく敷き詰められた心と頭でも、

その光をいつまでも記憶の中から見つけることが出来るのだ。

絶望だけでを感じさせるのではなく、少し温かさが伝わる歌詞も魅力的である。

 

ヒット作を出したアーティストは、その次の作品に苦悩すると聞いたことがある。

世間の注目を集めたことにより、

その曲のヒットでトップアーティストの道を登っていくか、一発屋で終わるか、

分かれ道が待っている。

多くのアーティストに関して、ヒットした曲の次にリリースした曲の方が、

売り上げ枚数は低いが良い曲が多いように思う。

 

米津玄師は2月にこのLemonをリリースし大ヒットとなってから、

満を持して今月9thシングル「Flamingo / TEENAGE LIOT」をリリースする。

多くのアーティストのように、ヒット後は期待が寄せられることもあり、

気に入ってもらえる可能性を増やすため母数を増やし、

両A面か、3曲以上をA面曲とするEPのようなシングルで来るか、

どちらかだと予想はしていたが、今回は2曲A面のシングルとなる。

ただ、ピースサインやLOSERなどヒットしそうな王道ポップスではなく、

耳に残るような雰囲気の異なる王道からは少し外した楽曲をメインにすることを、

予想していたリスナーは少なかったのではないだろうか。

しかし彼は既に一発屋になるようなアーティストではないことは、

多くのJ-POPリスナーが感じ取っていることは間違いない。

これから先も名曲を世にたくさん残すことを期待すると共に、

私個人的にも、これまでの心を捕まれるような楽曲が、

これからも発表され続けることを、楽しみにしている。