#42 少年 / Something ELse
初めて彼女の香を知った夜は
欲しかった全てを
手にした気がしたんだ
少年 / Something ELse(作詞:今井千尋)
2003年にリリースされたSomething ELseの14thシングル「少年/笑いたい」収録曲。
1998年にリリースされた「ラストチャンス」で知られる彼らの、
解散前晩期のリリース曲である。
大ヒット曲故にラストチャンスばかりが知られているが、
シングル16枚、オリジナルアルバムも7枚ほどのリリースがある。
この曲を始めて知った当時、私はまだ学生であったが、
この歌詞が非常に印象に残り、今でも時々頭の中で流れてくる。
愛しい人を抱いている瞬間が一番幸せだ、なんて言葉の意味を、
理解できるはずも無かったまさに「少年」時代の私でも、
「すごいこと歌詞に書くなぁ」と漠然とインパクトを受けていた。
しかしながら、変にいやらしくなく綺麗な言葉でまとめ上げており、
でもしっかりとイメージを映し出す表現の仕方が秀逸だと感じた。
好きな女性と付き合うことが出来て、初めての夜を迎えたとき、
高揚感を得る男性は少なくは無いだろう。
女性にとってもそれは同じなのだろうが、男子的な目線のこの歌詞は、
まさに少年が男になった瞬間の気持ちを描いたような、
男性人から共感を得られるような歌詞となっている。
「香」という言葉のチョイスも、歌詞らしくて非常に良い。
身体の関係があってこそ、その人を手にしたという気持ちを実感したり、
愛し合っているのだと確認しあう、大人の恋愛。
皆、いつかは大人になるのだから、そんな恋をする時が必ず来る。
ただあの子はあの子が好きらしいと噂が回ってキャッキャしていた時代には、
戻ることは出来ないだろう。あの頃はあれが恋愛の全てだったのだから。
「純粋な恋」が何をどう定義するのかはわからないが、
それが子供時代の恋愛を差しているのだとしたら、
その世界からはもう飛び出してしまっている。
「少年は消えていった」という歌詞で幕を閉じるこの曲にも、
そんな意味が込められているのではないだろうか。
「あの頃僕らは時間を無限と思った」
小中学生時代がものすごく長かったような、
そして社会人になるなんてずっと先だと思っていたような、
人生をゆっくり歩んでいる感覚をいつからか失い、
私の少年時代もいつしか消えていってしまった。
今や時間は光のように早く流れ、
あっという間に一年が終わってしまう感覚を覚えた。
それでも大人には大人の良さがあって、少年に戻りたいとは思わないし、
懐かしんで思い出話が出来ればそれで良いと感じる程度。
広い世界を知ってしまったら、狭い世界には戻れない。
皆が通過し感じた当たり前のこの感覚を、彼らは優しく、
そして鮮やかな言葉で歌い上げているのだ。