#44 芽 / NICO Touches the Walls

生まれ変わるさ何にだって

片道切符の命だもの

深く根を張って

ほら限りない大地の上へ

照らして

儚い今を何よりも

きっと世界は美しい

          芽 / NICO Touches the Walls(作詞:光村龍哉

 

2009年にリリースされたNICO Touches the Wallsの2ndアルバム「オーロラ」収録曲。

ロックバンドの中ではポップス寄りの楽曲が多い彼ら。

その中でも「芽」はスローテンポなロックバラードである。

2015年にリリースされたアコースティックアルバムにもセレクトされ、

ファルセットが際立つ珠玉のバラードへと形を変えて収録されている。

 

たった一度の人生。

一方通行で戻ることも出来ないのだから、夢へ向かう芽を出すために、

まずは根を強く張って大地が広がる光の方へ。

自分の思い描いた日々を懸命に生きよ、という力強いメッセージが込められた、

この曲の歌詞が非常に気に入っている。

真っ暗闇の土の中から、

芽を出そうと大地が広がるであろう光の差し込む方へ向かっている、

そんな情景が頭に浮かぶ。

 

ボーカルの光村が書く歌詞は、

どこか独特で他のアーティストにはない視点が多く見受けられる。

曲調はJ-POPに近しいロックではあるのだが、

曲名や歌詞は彼らならではのものが多く、

良い意味で「らしさ」を持っているバンドである。

光村の歌声・歌い方も一度聴いたら忘れられないようなオリジナリティがある。

 

そんな彼らも、長いキャリアの中でなかなかヒット曲に恵まれず、

無名ではないが大ヒット作もない、境界線の上を歩き続けている。

この曲がリリースされたのはまだデビューしたばかりの頃で、

後に「手をたたけ」「天地ガエシ」などの代表曲が生まれるわけだが、

「土の下にしっかりと土台となる根を張って、夢の芽を出してやる、

売れてやる!」のような決意が記されているようにも受け取れる。

 

片道切符の命。

私たちは何故生かされているのかもわからずに、やがて死を迎え、記憶を失う。

だからこそ、やりたいことをやらなくちゃ、という曲をたくさん耳にしてきた。

まさにその通りなのだ。だから数多くの曲が存在する。

私たちは今、どんな芽を出そうとして、

どんなビジョンを描いて日々を生活しているのだろう。

何のために根を張れば良いのだろう。

夢があることは素晴らしい。羨ましいことだ。

自分と言う名の花を、咲かせることができるのだろうか。

夢のない人間にとってみれば、夢に向かっている人が眩しく見えるものだ。

 

まずは何に向かいたいのか、イメージしなければならない。

そして、そのためには何をしなければならないのか。

今からだって、何歳だって、命ある限り夢を持つことは出来る。

時間の波に乗っている限り、私たちは必ず何かに向かっているのだから。

道の先を見据えよう。行きたい場所に辿り着く道を選ぼう。

命尽きるまでのこの儚い時間に、光を照らすことが出来るように。