#45 僕たちの決断 / Do As Infinity

「今年の暮れでスタジオが閉まる も一度集まろうぜ?」

知らないメールを開けたとたんに12年間が埋まる

「本気かな」つぶやくと会議が止まった

あの日から錆びた弦 ろくに弾けない僕だけど

それぞれ歩く道を僕らなりにあの時選んだはず

最期のアンコールはあれからずっと胸でなり続けている

       僕たちの決断 / Do As Infinity(作詞:Psycho Kawamura)

 

 2011年にリリースされたDo As Infinityの25thシングル「アリアドネの糸」収録。

一度解散した彼らが再結成し、2009年に再びリリースを始めたわけだが、

気がつけば解散する前よりも再結成後の方が活動期間が長くなっている。

近年のリリース曲はオリコン順位から見ても落ちてきてはいるが、

当初はまだ人気があり、表題曲「アリアドネの糸」はドラマ主題歌に起用されていた。

本作はそのカップリングとして収録された楽曲である。

 

夢に向かうリスナーの背中を押そうと、励ます曲はたくさんある。

しかしながら、夢を叶えられた人間よりも、

叶わずして歳を重ねている人のほうが、世の中圧倒的に多いだろう。

だから本当は、夢を追う若者に向けた楽曲だけでなく、

夢に敗れて普通の生活に身を置いている人々に向けた曲が、

もっとたくさんあっても良いのではないかと思う。

もちろん、世の中ポジティブでポップな曲が求められヒットするのは理解している。

それでも、夢は叶えるものでなく見るものだった人々へ向けた、

あの頃は輝いていたと思い出させるような「僕たちの決断」の歌詞は、

とても魅力的に感じ、夢を叶えようともせず見ていただけであった私にも、

心くすぶる内容となっている。

 

この歌詞の主人公が見ていた夢はバンドで成功すること。

メンバーそれぞれが各々の道を進むことを決め、

主人公のように普通の生活に身を置く人もいれば、

まだ夢を追ってバンドを続けている人もいた。

そんな中あるきっかけで、当時のメンバーが集まることに。

半端な気持ちで会えはしないと、距離を置いていた主人公が、

再びギターを手にしてメンバーの元へ向かう。

 

忘れてしまえるほど浅い夢じゃなかった。

僕らのあの決断。

誰もが経験する、と書かれているが、本当にその通りだ。

皆子供の頃に何かに憧れる。

野球選手、教師、アイドルや歌手、宇宙飛行士、パティシエ。

追いかけて諦めた人もいれば、夢見ただけで現実を生きた者もいる。

夢を手放す決断を、多くの人がタイミングは違えど経験している。

 

ギターを手に飛び出した主人公が、

諦めかけていた夢を叶えるような終わり方であったら、

私はこの曲をチョイスしなかっただろう。

「それぞれ歩く道は誰が正しいなんて決められない

僕らが描いた夢 時々確かめよう あの時の為に」

という歌詞で終わっているからこそ、共感したのだ。

時々思い出して、あの頃は楽しかったと、思い出に浸る。

そんな人はきっとたくさんいる。

だから、無理やり夢を叶えた結末にせず、

夢を叶えた人も別の道を行った人も、全てが間違いじゃなく、

時々そんな分岐点にいた自分を思い出してあげよう、あの時の自分のために。

そんなメッセージが込められた「僕たちの決断」に、魅力を感じたのである。