#57 明日の歌 / aiko

明日が来ないなんて思った事が無かった

いつでも初めては痛くて苦しくなるんだね

これはあなたの歌 嫌なあなたの歌

誰かが鼻歌であの雲の向こうまで

笑い飛ばしてくれますように

                    明日の歌 / aiko

 

2014年にリリースされたaikoの11thアルバム、

泡のような愛だった」収録のリード楽曲。

ベテランでキャリアも長いが、未だに首位を獲得することが出来る、

息の長いアーティストのひとりで、本作もオリコン1位を獲得している。

どの世代にも共感できる歌詞や衰えない歌唱力も魅力のひとつである。

 

いつでも初めては痛くて苦しくなるんだね。

この曲の中で最も印象的で、記憶に刻まれた言葉である。

初恋なんてとっくに終えているし、人に振られることだって、

振ることだって、この歳になれば一通り経験している。

そんな時、いつだって胸が痛く苦しくなったことを、思い出させてくれる。

そして、少なくとも自分が味わったそんな苦しみを、

きっと誰かにも与えてしまっている。

 

辛い過去を持つ人はたくさんいる。

私の想像の出来るような苦しみも、誰にも理解されないくらい壮絶な悲しみも、

知らないだけで色々な人の心の中に眠っている。

今、目の前で一緒に笑って話している人だって、

自分が知るもっと前に、絶壁の苦しみの壁を乗り越えていて、

今があったりするのかもしれない。

 

自分の身近な人が、実はとても深い悲しみを抱いていて、

それを知っても何も力になれない時、こんなに苦しいものかと思った事がある。

そしてそんな人が気持ちをぶつけて来てくれて、それには応えられない自分が居て。

でも、それで突き返したりなんかできない。あなたは私に必要な人だから。

これからも仲良くしていきたい、大切な人だから。

中途半端に応えてしまったことで、その人の気持ちを引き留め、

諦めさせることができず、余計に苦しい気持ちにさせてしまう。

その人の笑いながら流す優しい涙を見て、そんな気持ちを知って胸を痛めた。

そう、まさにこの歌詞のような気持ちを、自分が感じるのではなく、

相手に感じさせていると気付き、胸が苦しくなったのだ。

 

あなたは私の思い出の中に確かに居て、

同じ思い出でもあなたの中ではそれが光り輝く特別なものになっていて、

それを同じように特別な光として共有してあげることが出来なくて。

「好き」と一言で言うことができるのに、

何故その裏にある気持ちはこんなにも交わることが出来ないのだろうか。

違う道を通っているなんて、同じ場所に辿り着けないなんて。

 

自分の気持ちのほうが強くて、それが叶わない痛みなら耐えることが出来る。

でも、相手の気持ちのほうが大きくて、それには応えられなくて、

でもあなたとは縁を切ったりなんて出来なくて、人生に必要な人で。

そんな扱いをしてしまったら、あなたは辛く苦しくて。

それでもいい。

そう言われた。

それでもいいなら、友達でいられるのだろうか。

それでも?

本当はもっと、望んでいる。

 

明日が来ないなんて思った事が無かった。

あの日から、あなたの気持ちを知ったあの時から、

それまでの純粋に笑い合っていた二人に戻ることは無い。

こんな私の呪縛からいつか離れて、本当の幸せを手にしてくれるだろうか。

私が目くらましになることで、そこに居るあなたを幸せに出来る誰かに、

あなたが気付くことが出来ないかもしれない。

私よりも好きだと思う人に、ちゃんと出会ってくれるだろうか。

その時また仲の良い友達として、笑い合うことができるだろうか。

 

今もまだ、答えを出せないでいる。