#66 さよならの前に / AAA

最後のページに結末があるように

二人の日々も終わる時が来るのかな

揺れる気持ちを胸の奥に秘めたまま

ごまかすように抱きしめたりキスをしたね

震える指先で誓い合った未来も

確かなあの温もりも

別れの日が嘘に変えてゆく

君にさよなら告げるため

僕らあんなに愛し合ったのかな

これが二人の結末と知っても

好きだよって君に伝えられたかな

さよならの前に / AAA(作詞:森月キャス / ラップ詞:Mitsuhiro Hidaka)

 

2014年にリリースされたAAAの42ndシングル表題曲。

リリースから数年たった今も特別番組で歌唱する楽曲に選ばれる、

彼らの代表曲のひとつで、レコード大賞の優秀作品賞を受賞している。

過去の作品とは違いメンバー全員がリードボーカルを担えるようになり、

人気絶頂時に発表されたミディアムバラード曲である。

 

恋愛の終わりは、運命のいたずらで迎えることも稀にあるが、

多くは人間の決断によって幕を閉じる。

冷え切った状態に終止符を打つのも、どちらかの決断があってのアクションである。

一方は変わらず愛しい気持ちで溢れているのに、

もう一方が突然その終わりを告げることもそうだ。

そして、愛し合っているのに、別れなければならない、そんな運命も。

 

出逢いがあれば別れがあるとは言うが、

それは、死を迎えることによる旅立ちだと信じている。

添い遂げると決めた相手と、別れるつもりなんて毛頭ない。

結婚していなくたって、「この人といつか結婚する」と思って恋愛をしている人は、

少なくはないはずだ。

だけど時として、別れを選択しなければならない事情が出てきてしまうことがある。

 

それに気付いてしまったら、心はいつだって揺れてしまい、

顔つきも、口から出る言葉も、ただ純粋に好きでいた頃のそれとは異なって、

きっと相手はその異変に少なからず気付いてしまうだろう。

いつか終わらせなければならないと、

胸の中に葛藤を抱きながら、素直な瞳でこちらを見つめるパートナーを、

誤魔化すように抱きしめたりキスをして安心させる。

告げるなら、早いほうがいいのに、出来ないのだ。

あなたが悲しむ顔や涙を見たくなくて。

もしかしたら別れなくても良い、何か別の選択が出来ることになるかもしれないと、

叶いもしない希望を信じ続けている振りをして。そうやって、悪あがきをする。

 

変わってしまうのだ。別れを告げた瞬間に。

愛しているのに、あなたに伝えた「愛してる」が、嘘に。

失ってしまうのだ。

私を愛し信頼を寄せ包んでくれた、その優しさを。

「これが二人の結末と知っても、好きだよって君に伝えられたかな」

崖の上から突き落とされたような気持ちになるだろう。

いっそ出逢わなければ良かったと、言われるのだろうか。

出逢えて良かったと想い合える日が訪れるなんて、そんな奇跡は起こるだろうか。

 

さよならを告げるまででいい。

他の誰でもない、自分のそばに居て欲しい。

なんて我侭な感情なのだろうか。

だけど、この曲の歌詞の中で最も共感してしまうのだ。

大好きだから、さよならなんて本当は言いたくはない。

どんなに引き伸ばしたって、事情が変わらない限りいずれその時は訪れる。

苦しくて仕方がない。

頭の中で結末に辿り着いた時点で、別れを告げるべきだったのだ。

のめり込んでしまう前に。心から愛し合うその前に。

 

さよならを告げるために愛し合ったなんて、切ないけれど、

時間を共にすることが出来たから、人生の彩りが生まれ、

別れを迎えて深みに変わる。

仕事や勉強では学べない大事な何かを、人は恋愛で培っていくのだと、

大人になった今の方が、それをよく解っている。