#69 影 / 柴咲コウ

「僕は今どこにいるのだろう」

そんな立ち位置などたいして興味はない

対になる刺たち

頼りなどはじめから持ち合わせていない

穏やかさなどはきっと味わうことはない

ah そうして重みを伏せても

交わうことはできぬ愛すべき連れ人

                           影 / 柴咲コウ

 

2006年にリリースされた柴咲コウの9thシングル表題曲。

壮絶な人生を歩む主人公が描かれたドラマの主題歌として書き下ろされたため、

闇や陰を感じる、「影」というタイトルがぴったりの楽曲となっている。

 

生きている意味を感じられない。

何をして生きれば良いのかわからない。

今していることが、生きている世界が、正しいのかもわからない。

人は漠然とそんなことを思いながら生きている。

運命や使命を感じて生きている人だって、それは思い込みであって、

あるいはそうだと思いたいだけであって、

生きている本当の意味を知る者は誰もいない。

 

だからこそ、人と比べることは無意味だ。

自分の立ち位置など、考えるだけ無駄。

人と自分を比べて優位に立とうと、もがいている人間ほど愚かなものはない。

もちろん、他人など頼ったところで気休めで、

身を削って他人を幸せに導こうとする人間なんてほんの一握りだ。

 

そんな中、人は何を糧に生きているのだろうか。

死ねば何もかも無となる結末が待っているのに、何故生を求めるのだろう。

自ら終わらせる事だって可能なこの世の中に、

永らえる程の希望とは何だろうか。

 

それは結局、人なのだと思う。

どんなに二次元の世界に恋をしていたって、

ひとりで生きていくことを決めた人だって、それは気休め。

愛する人を見つけることができたら、世界は違って見えるのだと思う。

人は人からしか本当の希望をもらうことはできないのだ。

愛が唯一の糧になる。

今日が無事に終わることを考えている人に、

明日が楽しみだと思わせることができる。

平凡な当たり前が大嫌いな人に、

平凡な当たり前がいかに幸せかを感じさせることができる。

 

ただ残念ながら、世の中は陰と陽。

光と影が存在する。

愛を見つけて人生の輝きを感じている人の裏側で、

愛が欲しくても与えらえずに苦しんでいる人が必ずいる。

苦しみを味わっている人には、光は当たらないのか。

世界は平等なようで、そうではないのだから、誰にもわからない。

だから、自分を生きるのをやめる人がいる。

だけどそこでもう少し自分に賭けてみれば、幸せを掴める奇跡があるかもしれない。

 

人生は選択の毎日。

あなたの今日の選択の先に残るのは、光か影か。

悲しいかな、その答えを知ることは、生きていない限りなし得ない。

選択肢に少しの良し悪しがある限り、

選択したその先の結果を人は見たいがために、明日を生きる。