#71 Alone / 岡本真夜

反対側のホーム あなたと彼女見つけたの

楽しそうに二人腕を組んでた

彼女は私の大切な友達

もっと素直になれたら…もっと勇気を持ってたら…

何も受けとめられない

今もあなたがこんなに愛しい

Ah...Ah...Ah...Ah...

ぎゅっと誰か抱きしめて

あたたかい胸で泣かせて

一人で泣いてばかりで

あなたの胸で泣きたい あなたの胸で眠りたい

寄り添えば包んでくれる

でも欲しいのは同情じゃない

あなたの愛がほしい

                         Alone / 岡本真夜

 

1996年にリリースされた岡本真夜の3rdシングル表題曲。

透き通る歌声を持つ彼女だが、ファルセットを駆使するこの曲は、

より繊細で聞いていて心癒される珠玉のバラードである。

情景が浮かびやすく関係性がイメージしやすい歌詞も印象的で、

とても切ない失恋ソングとなっている。

 

「君は強いから大丈夫だよ」なんて、

そんなこと言われたら弱さ見せられない。

歌詞の出だしからリスナーの共感を生む。

人間は時に卑怯で、相手の気持ちを解った上で、

気持ちを吐露させまいと封じ込めるような言葉で盾を作ったり、

自分が悪いことを解って他人に指摘される前に自ら懺悔することで、

罪を軽くしようとしたりする。

学生の頃も、社会人になった今も、

周囲にはそんな人間はたくさんいるし、私もきっとその一人だ。

 

相手の気持ちや感情が目に見えないからこそ、

言葉や行動の駆け引きがあり、恋愛は特に、

人の本性や欲望が見え隠れする。

しかし世界(特に日本)には、自分の欲しい物を「欲しい」と主張したり、

生きたいように生きる人間が少ない。

好きな人の愛が欲しいと思うことは当たり前のことだけれど、

あなたが好きで、あなたからの愛が欲しくて、あなたと生きていきたいのだと、

伝えることが出来ずに終わってしまう恋を経験した人もたくさんいるだろう。

 

ずっと好きだった人に、恋人がいて、その恋人が大切な友達だったら。

人間は組織に属する生き物。

そんなの歌やドラマだけの世界だと思う人もいるかもしれないが、

意外とそれは日常に散在している。

もちろん、二人から想いを寄せられた人間の性格にも依るのだが、

その勝敗は、欲しいものを「欲しい」と言える人に軍配が上がり、

欲しいのに欲しいと言えずに遠慮してしまうようなキャラクターの人間は、

戦わずして負けたかのような絶望に襲われる。

そんな後悔や挫折を、理解しやすい言葉で描いているこの曲は、

昔の曲だけれど大人になった今、気に入り、耳を傾けている。

 

本当はあなたが好きなのだという心の底の底にある本来の欲望を隠した上で、

好きなその人に「寂しい」と、「辛い」と、涙を流しながら相談をすれば、

彼は私の肩を抱いて励ましてくれるし、胸を貸してくれるかもしれない。

でもその温もりは、「愛」ではなく「同情」の温もりなのだと、

本当の本当に欲しいのは、あなたの愛なのだと、そんな締めくくりで終わる、

究極の切なさで胸が締め付けられる、この曲がとても好きだ。

それは何故か。

私にも思い巡らすものがあるからだ。

あなたはとても大切な人だけど、好きだという気持ちに応えられないという、

そんな経験が。

その人がこんな気持ちで居たのかと思うと、胸が苦しい。

私だって苦しいけれど、想われる立場に居た私は、

少なくとも想い叶わなかった側の人間よりも幸せだったのだろう。

だからせめて、この曲を聞いた時は胸を締め付けておきたい。

ありがとうと、ごめんねを、忘れない為に。