#79 さよなら / 大原櫻子

さよなら あなたはわたしのすべてでした

世界でいちばん素敵にみえた横顔も

もう会えない 胸にしまうだけ

優しくて切ない想い出に変わるのね

あなたは最後も笑ってくれてたのに

わたしは涙がこぼれて何も言えなかった

「もう行きな」と手を離した

この恋は夢のように終わったの

               さよなら / 大原櫻子(作詞:水野良樹

 

2017年にリリースされた大原櫻子の8thシングル表題曲。

いきものががりの水野が書いた楽曲ということもあって注目されたが、

水野節全開、サビもやはり「あ行」の言葉から歌い始める。

ここ最近の若い女性ソロ歌手では久し振りに歌が上手いなと感じたアーティストで、

地声は高いキーで力強く、ビブラートをきかせたファルセットも得意とし、

生放送の歌唱も安心して聞いていられる。

近年はこういった歌手が減り、どこかそわそわして聞いていることが多かった。

完璧すぎないルックスも非常にキュートで、

どこか目を惹く注目のアーティストである。

 

さよなら。

とてつもなく解り易く、ストレートに書かれたロストラブソング。

昔と違って最近は歌詞がわかりやすく伝わりやすい、

フレーズも淡々とした楽曲がヒットする時代だと、

どこかのコメンテーターが言っていたが、まさにその通りだと思う。

現に恋人に別れを切り出すとき、私の頭の中には青春時代に聞いた曲ではなく、

この曲が流れていた。

 

まだ自分のことを好きでいてくれているのに、

別れを告げなければいけない苦しさ。

長く付き合うと同情も生まれ、本人だけでなく、

その友人や家族の顔までもが頭に浮かぶ。

皆、この子を幸せにしてくれるのだと、とても良い人を見つけたねと、

その子に祝福を送ると共に私を肯定的に思ってくれていたに違いなかったからだ。

 

だけど、別れようと決めてからは、気持ちの降下速度は大きくなった。

何度も修復しようと長い月日をかけて悩んでいたはずなのに、

心が決めたら呆気ないものだった。

それでも面と向かうとなかなか話を切り出せなくて、

いつも通りの日常の会話を、間が空かないようにひたすら続けた。

 

さよなら、あなたはわたしのすべてでした。

そう思ってくれていたのかな。

気持ちに応えてあげられなくて、幸せにしてあげられなくて、本当にごめん。

寂しい思いをさせたね。

「あなたは最後も笑ってくれてたのに」の「くれてた」が頭に引っ掛かっていて、

泣いてはいけないし、笑顔で手を振らなきゃと思っていたけれど、

最後に今までありがとうと抱きしめあった時には、自然に涙が零れ落ちていた。

「もう行きな」と笑って言ってあげることは出来なかったけれど、

最後の最後、話が終わった後に二人で笑顔で撮った写真を、

帰りの電車の中から私に送ってきてくれた。

「ありがとう」、その言葉を添えて。

 

私はこの曲の「あなた」に当たる人物であろうと思っていたのに、

いつの間にか「わたし」のように、涙がこぼれて何も言えなかった。

そう、この恋は夢のように終わった。私が、終わらせた。

だけど別れは、新しい出逢いを運ぶ。

きっとそれぞれの明日を生きていくことで、それぞれの新たな光を掴む。

どうか幸せになってね。私と居た頃よりも、うんと。

私も、あなたが思うよりもきっと、幸せになるからね。