#83 未完成 / 家入レオ

愛を止めて僕から逃げて

否定していいよ 全部全部

このままだと君を壊す

いいの?いいの?いいの?

二度と振り返らないで

上手く幸せになってね

こんな僕が愛してごめん。

もう自由だよ

          未完成 / 家入レオ(作詞:家入レオ・Kanata Okajima)

 

2020年にリリースされた家入レオの16thシングル表題曲。

彼女らしい影が差す歌詞と透き通った声のギャップに味があり、

力強く一所懸命に歌う声の出し方も印象的な楽曲。

発売前に初めて聞いたときから非常に気に入っていた曲である。

 

どこの歌詞を抜粋したら良いか迷うほど、共感する部分の多い歌詞で、

第一印象は、よく耳にする「まるで私のことを歌っているよう」と言うよりは、

こんな表現で別れの歌を書く人もいるんだな、と、

感じたことのある自分には言葉に出来ない胸の痛みが、

字になって目に飛び込んできた感覚だった。

別れて悲しい、どうして会いたい、好きだったありがとう、そんな失恋歌が多い中で、

数少ないタイプの曲なのではないだろうか。

 

別れを決めても、相手がまだ自分のことを好きだから悲しませるんじゃないか、

そんなことを思って恋人の涙する顔を浮かべてしまうと、

決意しているはずなのに言い出せない。

相手の両親や友達の悲しむ顔まで浮かんでくる始末。

情けない。

一年くらい、揺れていたものだった。

嫌いになったわけではない。好きじゃなくなっただけだったから。

LoveがLikeになっただけ。

一緒にいるのは楽しかったけど、恋じゃなくなっただけだったから。

 

愛を止めて僕から逃げて。

このままだと君を壊す、いいの?

心のどこかで、自分が別れを告げる前に、

何かを感じ取って向こうから終わらせてくれないか、そんなことも考えていた。

終わりたい、終われない。いいよ、君が決めて。

 

でも、いつまでもそんな訳には行かなかった。

一年も悩んでいたんだもの、相手が気付かないはずがない。

「付き合っているのに、寂しい。」

定期的に会っていたし、連絡も毎日取り合っていたけど、

やはり私の心が離れていることを、ちゃんと感じ取っていた。

とても申し訳なかった。

だけど、その言葉を聴いた瞬間に、スッと肩の荷が降りた気がした。

今なら、伝えられる。

 

お互い泣きながら、ありがとうと感謝をし合い別れることができた。

「二度と振り返らないで。上手く、幸せになってね」

この曲を聞いて私が一番驚いた部分だ。

そう、まさに、そんな気持ちだった。

最初はそんなつもりはなくても、結果、自分と長く付き合ったせいで時間を奪ってしまった。

貴重で短い、若く輝かしい日々を。

こんな僕が愛してごめん、もう自由だよ。

自由にしてあげるまでに時間がかかったけど、

笑顔でお互いの心を解き放つことが出来て、安心した。

 

この曲を聞くと、罪の意識に苛まれながらも惰性で続けていた私の醜い心をえぐられる。

決して忘れてはいけないことだと思うから、次の恋では絶対にそんな事をしてはいけないから、

それで良いと思っている。

本当に、本当にありがとう。そしてごめんね。

もっとあなたに合う素敵な人を見つけて、私ではない別の人と、

上手く、幸せになってほしい。

「もう今日で終わり?友達としても会わないのかな?」と言われた時に、

君が友達として会うことを望むのなら、きっと会えるよ、と答えてしまったけれど、

二度と振り返らないで、新しい未来へ向かって欲しい。

君はもう私の呪縛から解き放たれた。

もう、自由だよ。