#86 卒業 / コブクロ

いつも隣でふざけてた君が

俯きながら肩を揺らし「また会おうね」と呟く

卒業が別れじゃない事を知るのは

今よりもっと大人になれた時

その日までそれぞれの道を歩いて

つまづいて振り返り(振り返り)

きっときっと(きっと)また会えるその日まで

                         卒業 / コブクロ

 

2020年にリリースされたコブクロの31stシングル表題曲。

キャリアの長い彼らが、今年になって卒業がテーマの王道曲をリリースした。

タイトルもまさにその通り。

数多くの卒業ソングが人々の記憶に刻まれる中、その中の一曲になることを期待してか、

シンプルな曲名からその自信が伺える。

学校のチャイムの音階で曲が終わる演出についても、

今まであったようにも思えるが新しさを感じ、とても心地良く、懐かしさもこみ上げた。

 

卒業が別れじゃない事を知るのは、今よりもっと大人になれた時。

私が一番気に入っているフレーズである。

この曲を聞いて思い出した友人の顔は、

皆学生の頃の顔ではなく、大人になってからの顔だった。

まさに歌詞の通り、卒業は別れじゃない。

むしろ卒業した後の方が、仲の良い人だっている。

 

学生の頃は、狭い世界の中で必死にもがいて生きていたけれど、

歳を重ねるとそれが不思議で仕方がない。

何故あんなに必死だったんだろう。そして未熟な精神状態でよく耐えていたものだ。

卒業は、その世界が世界の全てだと思っていたから、

失ってしまうことが恐くて、悲しくて、切なくなる。

だけど、その狭い世界を共有していた同志達と、

大人になって、世界の広さを知った後にする昔話は、大いに盛り上がる。

今も、共に過ごした学生時代のネタで何時間もお酒が飲める。

あの頃の何もかもを笑って話せるのだから、いい大人になったもんだと感じる。

 

今の現役の若人達に、そんなことを言ってもピンとこないだろう。

昔よりもいじめやハラスメントは深刻化しているようにも感じる。

何も良い思い出を持てずに旅立つ子供もきっといるだろう。

だけど、人生常にどん底なんてあり得ない。

必ず笑って話せる日が来る。

それが例え当事者同士でなくても、誰かとその経験を共有できる時間が必ず来る。

私が平凡に幸せに生きてこれたからなのかも知れないが、私はそう信じている。

年齢と共に視野をどんどん広げて、大きな悩みをちっぽけな悩みに変えていけばいい。

学生に向けた曲なのだろうが、通り過ぎた私にとっては、

そんな気持ちを、思い出させてくれた一曲だった。