#77 Love Story / 安室奈美恵

誰を見つめても 誰と過ごしても

忘れられる日など来るはずない

この胸の中で愛し続けるけど

一緒にはいられない もう

Cause life's no love story

やがてすれ違うと知っていても

出会えた事 この奇跡感謝してる

かけがえない日々も後悔も痛みも

悲しみさえ輝かせるyes, someday...baby

誰よりもきっと愛しているけど

選んだこの道を歩いてくから

生まれ変わっても愛し続けるけど

一緒にはいられない もう

Cause life's no love story

                                   Love Story / 安室奈美恵(作詞:TIGER

 

2011年にリリースされた安室奈美恵の38thシングル、

「Sit! Stay! Wait! Down! / Love Story」収録曲。

両曲月9ドラマに起用され話題となった、彼女の晩期代表作である。

特にこの「Love Story」はダウンロードチャートで大ヒットを記録し、

長きに渡ってチャートトップ10に入っていたことを覚えている。

初めて聞いた時は、「あれ?安室奈美恵、急に声低くなった?」と感じたが、

今となっては何も違和感なく聞いている。

 

この曲を聞いた当時、誰よりも愛しているのに、何故一緒にいられないのか、

意味がわからなかった。

ドラマを見ていくにつれて、「あーなるほどね」と、

夢である仕事を選んでお互いに別々の場所に向かって歩いていく、

そんな結末のドラマだったことをうろ覚えであるが記憶している。

それでもその時はあまりしっくり来なかった。

大好きなら、その人と一緒にいながら夢を叶える方法を考えなきゃ、

と思ったからだ。

 

だけど、大人になって、愛しているのに一緒にいることを選べないことは、

確かにあることを知った。

例えば堂々と人前に立てない関係である時。

彼女のこの名曲を不倫の歌だと言う気はさらさらないが、

人生で一番愛した人が既婚者だったら。

特に家族を持っている側は、子供の幸せのために、

例え奥さん、旦那さんよりも素敵な人に巡りあってしまっても、

大切な家族を捨ててまで一緒にいようと決断するにはかなりの勇気と根性が要る。

 

それからマイノリティの人たち。

年末の紅白歌合戦でも、

MISIAの圧巻の歌声と多様性を表現したステージが話題となったが、

本当は同姓が好きで、最愛の人がいたけれど、

社会に受け入れられないことを畏れて、

異性のパートナーを見つけて「一般的な幸せ」を手にしている人がきっといる。

 

自分が心底愛した人のことは、きっと忘れることはない。

誰を見つめても、誰と過ごしても。

あの人ともここに来たな。

あの人の笑顔は素敵だったな。

あの人からこれもらったんだよな。

今のパートナーに隠れてそんなことを思い返したり、

もちろん最愛の人がいたことを理解した上で結ばれている人たちだっているだろう。

 

一緒にいられないのは悲しいけれど、

目の前からいなくなってしまったら絶望するけれど、

短い人生を生きる中で、心の底から誰かを愛するという気持ちを知った人は、

今がどうであれ、本当に幸せだと思う。

その人のことしか考えられない毎日を、

その人のために尽くしたいと思える気持ちを、

全く知らないで生きている人は意外と多いと思う。

恋愛をたくさん経験していることが幸せではない。

大事なのはその中身だ。

 

大事な人と離れることを決断することは、とても苦しい。

簡単に決められることではないし、受け入れるまでに時間がかかる。

だけど人はそうやって深みを増していくのだと私は言い聞かせている。

恋をして、愛を知り、別れの痛みを知ることで、

人はより輝くことができるのだと、信じている。