#53 不協和音 / 欅坂46

不協和音で既成概念を壊せ!

みんな揃って同じ意見だけではおかしいだろう

意志を貫け!

ここで主張を曲げたら生きてる価値ない

欺きたいなら僕を抹殺してから行け!

ああ 調和だけじゃ危険だ

ああ まさか自由はいけないことか

人はそれぞれバラバラだ

何か乱すことで気づくもっと新しい世界

                 不協和音 / 欅坂46(作詞:秋元康

 

2017年にリリースされた欅坂46の4thシングル表題曲。

秋元康プロデュースのアイドルグループながら、

激しいサウンドとダンスにストレートで生々しい歌詞の曲を歌う、

他のアイドルグループに比べると異色のグループである。

 

子供の頃から、私は周りを見て意見や行動を決める人間だ。

あの子は何をしてあげれば喜んでくれて、

あの子には何を言ってあげれば自分を嫌いにならないでいてくれて、

親や先生、大人には迷惑を掛けずに言うことを聞いておくのが一番だと、

そんなことを考えて生きてきた。

だから、大人になった今でも我を通すのは苦手だし、

心を許した相手にだって、したいこと、行きたいところ、

自分の欲を先にひけらかすことはない。

 

そんな自分はつまらない人間だと思っている。

本当に戻れなくなる前に、まだ若い年齢と思われている今のうちに、

やりたいことを見つけたり、なりたいものになろうとすべきなんだろうと、

そんなことを心の中で思いながらも、普通の毎日を坦々とこなしている。

きっとどこかでリスクを恐れて、平凡な毎日を手放すのが恐くて、

今の生き方から逃げることが出来ないでいる。

 

勿体無いんだ。

親の言うことを聞いてそれなりに勉強をして、

学校に通って、良い会社に入って、友人や恋人にも恵まれて。

何十年と我慢したからこそ得られたものを、失うことが。

恐いんだ。

心の声を抑えて「正しい」とされるレールを選択して過ごしてきた時間を、

自分で否定してしまうことが。

 

だから、欅坂46のような若い世代の歌手が、若い世代に向けて訴えかけるその言葉が、

親の囲いの中で、学校という狭い世界で生きる同世代の人々に、

届いてくれていたら良いなと切に願う。

大人になって気づくのだ。

仲間はずれにされるのを畏れて、周りに同調ばかりして、

自分を押し殺していたことの空しさを。

人はみんな違って当たり前なのに、

違うことに指を差されることが恥ずかしいことだと思っていたことの愚かさを。

 

でも、その世界しか知らない若い世代にとって、現実に不協和音を響かせることに、

どれ程勇気が必要で、その後どれ程強くあり続けなければならないか。

きっと難しい。

強い心を持って発したとしても、冷ややかな目やいじめという現実に、

押しつぶされてしまう可能性のほうが往々にしてあるのだ。

だから、きっと私のような大人がたくさん世に溢れていく。

 

綺麗事を言うのは簡単。それを書くのも歌うのも簡単。

それを受けて実際に行動するためのエネルギーがどれ程必要なのか、

行動できなかった私には計り知れない。

でも、もし何か少しでも自分の世界を変えることが出来た人が居てくれたら。

人生捨てたもんじゃないって思わせてくれた何かがあったなら。

私が子供の頃もらうことが出来なかったその勇気を、

誰かに与えることが出来ていたのなら、

アイドルグループだって捨てたもんじゃない。

学生時代に欲しかった言葉を、学生時代に聞けていたら、

何か心動いたかもしれないな、なんて、

この曲を聞くとぼんやり考えたりしてしまう。