#28 街 / 堂本剛

君が苦しめられない保証がこの街にもあれば

勇気なしで背中押したけど

未だ気がかりだよ

強がるときが来たとしたら

これはチャンスだって

君ならきっと笑い飛ばせてるよね

                           街 / 堂本剛

 

2002年にリリースされた堂本剛のソロデビューシングル「街 / 溺愛ロジック」収録曲。

ソロ活動はKinKi Kidsとは完全に切り離して行われており、

KinKi Kidsの楽曲の雰囲気とは一転した曲のリリースが多い中、

デビュー当時の楽曲は比較的J-POP色の強い曲が多い。

デビュー曲として両極端な2曲が両A面としてリリースされ、

「街」は王道バラード曲となっている。

 

どこか暗いイメージの強い堂本剛

彼の描く世界は独特な世界が多く、時に理解し難い内容も多い。

しかしこの曲はまだ彼が20歳そこそこの年齢で書かれた曲だからか、

人間の揺れ動く内面や叫びがストレートに綴られており、

とても共感しやすい曲となっている。

 

人間らしい一面を見せているのは、

ネガティブな気持ちとポジティブな気持ちが入り混じり、

浮いては沈むような流れになっている部分である。

夢を捨てた日のことを思い出して胸を痛めているシーンがあれば、

小さい男で終わりたくないと鼓舞しているシーンもあり、

自分が傷つくこともあるのだけれど、人の痛みは見失いたくない、

という弱さと強さが交互に見えるような所に人間らしさを感じる。

 

自分のいる街、君のいる街。

街は様々な顔色を持ち、様々な人間がそこで共存している。

しかし共存はしているものの、互いに関わろうとはしないのが現代。

君が苦しめられない保証がこの街にもあれば、勇気なしで背中を押した。

恋人と別れるとき、子供が成長し家を出て行くとき、転校・留学・転勤、

様々なシーンで別の街へと離れていく人の背中を見届ける。

その人が暮らす街は安全だろうか。ちゃんと食べているだろうか。

風邪を引いたときに通える病院はあるか。地震や災害の危険はないか。

大切な人を見送るのだから、そんなことを思う人はきっと多いはず。

未だ気がかりなんだけど、君ならきっと笑い飛ばせているよね、

という心の中の葛藤のような言葉は、多くの人の胸を打つだろう。

 

ご近所同士や商店街に通う人々が助け合っていた時代と、現代は違う。

周りの人の優しさに触れる機会は極端に少なく、

今や自分を守れるのは自分だけ。

だから離れた街で暮らす自分の大切な人のことも心配になる。

時代は時代。全国的にそうなってしまっているとは言わないが、

昔のように人々が助け合う世の中にはもう戻らないだろう。

自分を守り生きていく時代。人と関わる事は少なくなっている。

それでも人の痛みがわかり、気付ける人間でありたい。

そのために私たちはこの時代を、どう生きていくべきなのだろうか。