#16 こっちを向いてよ / WEAVER

君の笑顔が何年経ってもまだ胸の中で

好きだとは言えずにいた恋の方が

いつまでも消えないまま

足りない言葉も不器用な嘘も

全てかけがえのない二人の日々

歩き出した街の中 僕は今も空を見上げる 

いつか会えたら話せるかな

君の知らない儚い初恋

            こっちを向いてよ / WEAVER(作詞:河邉徹)

 

2014年にリリースされたWEAVERの4thシングル曲。

スリーピースバンドながらボーカルはピアノを演奏しており、

非常に珍しいバンドスタイルである。

また、ボーカルが作詞するバンドが多い中、

ドラムメンバーが作詞している点も特徴のひとつである。

 

好きな人へ好きと言えないまま、今を過ごしている人はたくさんいる。

そしてこの歌詞の通り、そういう恋は美しいまま記憶にいつまでも残り続ける。

甘く、でもほろ苦く、あの時は若かったなぁとか、

すごく好きだったなぁとか。

だから大人たちは声をそろえて青春時代を羨み、

青春真っ盛りの学生たちに羨望の眼差しを向ける。

自分が学生の頃は大して良いとは思っていなかったが、

やはり若いとは素晴らしいことなのである。

 

この曲の主人公は故郷を離れて暮らしているが、

戻ってくるたびにその地で恋をした初恋の人を思い浮かべている。

そして最後まで自分の方へ好意を向けられることはなく、

友達のままで終わってしまった儚い初恋は、本人に言えないまま。

「今だから言えることだけど、昔好きだったんだよ」

いつか会えたら話せるかな、なんて思っている所がまた心をくすぐる。

 

本当のことを言いたかったのに言葉が足りなかったり、

嘘をついて誤魔化してしまったり。なんて若かったのだろう。

それでも、好きになった人は人生の中で特別な人として記憶に残り続ける。

こっちを向いてよ、なんて直接言えなかった人。

深く交わることが出来なかったからこそ、美しいまま残る記憶。

何度も恋をして誰かに夢中になったって、忘れることはない。

でもそれで良い。それもまた生きた証。

経験を積んで、また素敵だと思う人が現れたときに、

その儚い記憶があればきっと次は言えるはず。

聞いていて、心が洗われるようなピュアな気持ちを蘇らせる曲である。