#51 Memorial address / 浜崎あゆみ

胸騒ぎとともに眠りについた夜更け

とても悲しい夢を見ていたのを覚えている

その朝予感は沈黙を破るように

鳴り出した電話で現実のものとなった

心に消えない傷跡を残したまま

あなたは一人星になった

さよならね

もう二度と会えない場所へ行ったのね

永遠の別れの冷たさを受け止められずに

聞かせてほしかった

嘘で構わないから

あたしはあなたに確かに愛されてたって

たった一度でいいから

                   Memorial address / 浜崎あゆみ

 

2003年にリリースされた浜崎あゆみの1stミニアルバム「Memorial address」表題曲。

ファンからも人気の楽曲で、ベストアルバム「A BEST 2 - BLACK-」にも、

シークレットトラックとして収録されている。

誰もが直面する死と別れをテーマにした歌詞が印象的なロックバラードである。

 

大切な人の死は、いつか必ずやって来る。

病気を抱えて衰弱していく様を目の当たりにし、

予期することができて見取ることも出来れば、

それは突然にして訪れることもある。

 

私たちは毎日を当たり前と思って生きている。

今日一日は、大勢の人にとっての普通の一日であって、

普通の一日は何かのきっかけで忘れられない一日に変わる事だってある。

毎日を生きていく中で、

いつか訪れる大切な人の死が今日来るだろうなんて、考えている人はそういない。

もう長くないと言われていたって、一日でも長く生きていてほしいと願うばかりだ。

 

今、自分の周りの誰かが突然亡くなってしまったら。

もしくは自分がこの世から旅立つことになったら。

 

もう二度と会えない場所に行ってしまう。

それは時として残酷で、わだかまりを残したまま、永遠となってしまう。

いつか伝えられれば良いやなんて思っていたことは、永遠に伝えられない。

いつか仲直りできればなんて思っていたら、そのままの別れになってしまう。

 

誰かが死ぬことを想像なんてしなくていい。

大切なのは、「ありがとう」と「ごめんね」を、ちゃんと伝えること。

言えないままのさよならにならないように、

気持ちはちゃんとぶつけておかなければいけないということ。

あの人は大丈夫なんて、なんの保証もない。

 

どんな別れでも、悲しいことには代わりないけれど、

家族に、恋人に、友達に、同僚に、たくさんお世話になった人たちに。

伝えておきたいことは、ちゃんと伝えておこう。

#50 Tea for Two / 東方神起

風に揺れる午後の光

テーブルに乗せたTea for Two

僕はソファに横になって君を見つめている

何だか歌っているみたいに繰り返し読んでるレシピ

どんなものが出来上がるの?

レモンとバニラの香り

君が作ってくれるならそれだけでホント嬉しくて

ずーっと続くように

               Tea for Two / 東方神起(作詞:H.U.B.)

 

2009年にリリースされた東方神起の28thシングル「Stand by U」に収録されている、

カップリングナンバー。

何気ない日常にこの上ない幸せを感じ、

自然と笑みがこぼれるシーンが目の前に広がる歌詞と、

優しいメロディーに彼らの柔らかなハスキーボイスが光る、

至極のミディアムバラードである。

 

5人時代はハーモニーを強みとしている傾向が強く、

バラードやミディアムバラードのリリースの割合が多かったためか、

代表曲もスローテンポの曲が多い。

また、日本人が作詞作曲している曲が多く、

J-POPとして耳馴染みが良い曲ばかりなのも印象的である。

対して2人体制になってからはK-POP色が強くなり、

ダンサブルな曲が目立ち、お洒落さを売りにしている傾向がある。

K-POPアーティストとしては唯一と言えるほど長い間、

今も昔もそれぞれ魅力を持っているからこそ人気を保っている。

世間的にA面のStand by Uは彼らの代表曲としてヒットし記憶されているだけに、

当時シングルを手に取った人は多く、

ファンでなくてもこの曲を耳にしたことがある人は、

マイナー曲の中では多いのではないだろうか。

 

風に揺れる午後の光

このひと言だけで、ありふれた毎日の中のワンシーンを思い浮かべる。

そして、情景が浮かぶように言葉が続いていて、

聞き始めから曲の世界観に吸い込まれる。

繰り返しレシピを声に出して読むほど、料理は得意ではない彼女が立つ台所からは、

レモンとバニラの良い香りが漂う。

きっとこの後うまく作ることが出来るのだろう。

紅茶をお供にテーブルに座り、おいしいと言いながら笑い合うひと時を想像させる。

 

人はないものねだりをする。

だから「平凡」を手に入れている大半の人は、別の目標や夢を描く。

普通が一番なんて言いながら、心ではもっともっと上にと願っていたり。

平凡に幸せを感じられたら、それだけで毎日はもっと輝くのに。

見えているかい?君の目の前に広がる平凡の中に煌く幸せが。

そんな風に言われている気持ちになる。

2番に続く歌詞は、明日で世界が終わるなら明日もこうして笑いたい。

主人公の彼が最後の瞬間に選ぶ時間は、そんな時間なのだ。

 

私は、そしてリスナーは最後の瞬間に今日という日を選ぶだろうか。

最後なら、もっとこうしていたいとか、どこかへ行きたいとか、

何も言われずに聞かれたら考えてしまうかもしれない。

つまらない人生だったなんて、ため息をつくかもしれない。

でも、偉業なんて成し遂げていなくていい。

世間が認める成功なんてしていなくたっていい。

あ、幸せだな。

そう感じる瞬間が日々に転がっている人こそ、素敵な人生を歩んでいるのだと思う。

もちろん、日々に感謝をしつつ更に上を目指して努力する人も尊敬する。

私は東方神起の曲はそんなにたくさん知らないが、

素敵な歌に出逢えたなたと思うし、これからもそんな歌に出逢えることを願っている。

#49 気分爽快 / 森高千里

まさかあなたが彼を射止めるなんてさ

まいったな 私は正直ちょっぴりショック

人生だわ これも巡り合いなのね

ありがとう ちゃんと話してくれて

                        気分爽快 / 森高千里

 

1994年にリリースされた森高千里の22ndシングル曲。

彼女の代表曲のひとつであり、

歌手活動再会後も音楽番組で歌唱するシーンをよく目にする。

歌声や声の伸びだけでなく、ルックスも含めかなりキープされており、

今テレビで歌唱曲を聞いても聞き苦しさなどない、

若々しさを感じさせるベテラン歌手のひとりである。

 

同じ人を好きになった友人から、

彼を射止めて付き合うことになったことを打ち明けられたシーンを描いた歌詞。

現実に起これば喧嘩や修羅場のようなシーンとなる可能性も大いにあるが、

最初から最後までショックな気持ちを漂わせながらも、

友人の背中を押しつつ「おめでとう」と喜びの言葉を掛ける、

そんな優しさと切なさが複雑に入り混じった感情が鮮明に感じ取れる歌詞が、

非常に印象的で聞いていて心穏やかになれる。

 

自分の好きな人が他の人と、

それも自分の友人と付き合うことになってその報告を受けたら、

どんな気持ちになるだろうか。

おめでとうと心からの祝福はできないかも知れない。

本作品の主人公も、心からの言葉ではなかったかもしれない。

でも、悔しさや悲しさよりも友人との関係を大事に出来るような、

素直に友人の幸せを祝福できる心を持つことが出来れば、

きっとその人にも後から素敵な人との人生が待っていると信じたい。

類は友を呼ぶなんてありきたりな言葉を使いたくはないが、

素敵な人には素敵な人が、きっと集まるものだと思う。

 

そう思ったら、恋愛に限らず今目の前の人生で、

素敵な事が起こるようにと日々を邁進することが出来る気がする。

悪いことをすれば悪い人が寄ってくるし、

嘘をつけば嘘をつかれるのだから。

 

それぞれの社会に生き残る為に必死になっている人が多い現代。

清らかな心で生活できるような平和な世の中ではないのかもしれない。

それでも、ほんの少しだけでも、希望は忘れずに持っていたい。

世間に溢れている綺麗事をリアルに重ねることができなくたって、

すっと力が抜けるような爽快な気持ちに、一瞬でもなれるのであれば、

まだ心は廃れてはいない。それでいい。

#48 my brand new way / 小池徹平

流れ星のように儚い速度で過ぎ去る今を

目に焼き付けて

見慣れた日常?そうじゃないだろう

新しい道 君と歩こう

                my brand new way / 小池徹平

 

WaTで活動していた頃のソロ企画で、

ウエンツ瑛士のソロ楽曲と両A面で2007年にリリースされた2ndシングル、

「Awaking Emotion 8/5 / my brand new way」収録曲。

爽やかな彼のイメージにぴったりの前奏と、

高音でも力を抜いたようなクリアな歌声が伸びやかに続くのが印象的な一曲。

彼の曲は世間的には圧倒的に「君に贈る歌」の方が知名度が高いが、

本作はキーが高く歌唱力が要求され、曲のクオリティも高く感じる。

最近は歌唱と言えば年末のテレビ番組で多少見かける程度のメディア露出となったが、

今も特番に呼ばれるのはその歌唱力を認められているからなのではないだろうか。

 

一瞬一瞬の積み重なりである時間。

今しかないこの瞬間を大切に、と歌う曲は多いが、

「流れ星のように儚い速度で過ぎ去る今」と言う表現の仕方が、

誰にでも簡単にすっと理解できる表現になっていて、

曲を聴きながらでも歌いながらでも、

この言葉が無意識に頭に入ってくる感覚が気に入っている。

 

自分が努力して拓いた道は、その過去がなければ歩くことの出来なかった道。

見慣れた日常を新しい日常に変えることができた、

その景色を目に焼き付けて歩き出す。

その新しい感覚も、やがては過去になるのだけれど、

一所懸命に切り開いた人生の記憶は、忘れることはない。

そんな経験があるから、次の向かい風にも、また向かっていけるんだ。

シンプルだが、「頑張れば報われる」ということを実現した主人公を描いている。

 

今を忘れないように残す写真。

写真を撮っておけば確かに「このときはこんなことがあった」と、

思い出すことが出来るが、

写真があることによってそのシーンのみが鮮明に記憶から切り取られ、

残すことができなかった瞬間のことを次第に忘れていってしまうことが多い。

 

思い出は心の中に仕舞っておく人もたくさんいるだろうが、

時間と共に薄れていく記憶の中で、

目に焼き付けたものはどのくらい鮮明に残るのだろうか。

印象に残ったシーンだけがフラッシュバックされるものだが、

「この瞬間だけは絶対に忘れない」

そう心に誓って目に焼き付けたものも、次第に薄れていくものだ。

 

発達した技術に伴い多くの記憶媒体が出回っている現代。

私たちは大切な「記憶」を残すことに、

技術の力を頼り「記録」することが大半である。

でも、本当に心の底から感動したその瞬間の感情は、

何を使っても形に残すことは出来ない。

儚い速度で過ぎてしまう忘れたくないその瞬間をしっかりと目に焼き付けて、

また新しい日々を踏み出す糧にする。

少しずつ記憶が書き換えられたり、重要な場面以外の記憶が薄れたりするのだけれど、

それを繰り返して人は生きる力を養っていくのだ。

#47 恋をしている / Every Little Thing

「やっぱりいいな

こうゆうのが凄く嬉しいな」

君はそう言って少しのあいだ

俯いては笑った

今日はすごく冷えるから

あたたかくしてさ

おいしいなぁってビールなんか飲んでさ

そうやってなんてことない毎日に

ほらまた救われていたよ

「やっぱりいいな」

廻り廻った君の言葉をかみしめて泣けた夜

        恋をしている / Every Little Thing(作詞:持田香織

 

2007年にリリースされたEvery Little Thingの33rdシングル、

「恋をしている / 冬がはじまるよfeat.槇原敬之」収録曲。

聴くだけで寒い冬に温かい光を灯してくれているかのように感じる、

持田香織の包み込むような柔らかな歌声に絶妙に絡むサウンドが印象的な曲。

平凡な中に幸せを感じる、日常をテーマとする歌詞が多い彼女の歌詞。

本作はまさにその王道とも言える歌詞に、「冬」というテーマが添えられている。

 

「やっぱりいいな」

寒い日に部屋を暖かくして、冷たいビールで喉を潤す。

一日のそんな些細な幸せに、やっぱりいいなぁと感じた後に、

改めてサビで「やっぱりいいな」という言葉が登場する。

ひと言目は恐らく素直に出た言葉。

二言目は、今この瞬間を思い、幸せを感じて出た本音だろう。

あなたとこうやって、なんてことない毎日の中に幸せを感じられることが、

素でも、思い返した後にも「やっぱりいいな」と思うのだ。

そんな廻り廻った言葉を相手から聞けた主人公が、

心からまたそこに幸せを感じ、涙を滲ませる。

 

この情景を思い浮かべるだけで、

幸せを分けてもらえた気持ちになるのと同時に、

暖かさを象徴するかのような伴奏が更に心を暖めてくれる。

こんなに聴いていてほっこりできる曲は、数少ないのではないだろうか。

 

「幸せ」の尺度は人ひとりひとり皆違っている。

彼女が描いたような日常に、毎日幸せをかみしめている人もいれば、

ありきたりな日常にうんざりしている人もいる。

でも、小さな幸せを感じられることは、とても良いことだと思う。

どんなに些細でも、心が満たされることは更なる幸せを呼ぶことだろう。

 

おいしいものを食べることができて幸せ。

好きな音楽を聴けることができて幸せ。

やりたい仕事ができて幸せ。

好きな人と一緒にいることができて幸せ。

家族と過ごす時間を持つことができて幸せ。

 

この世界には、私たち多くの人々にとっての当たり前を、

当たり前に感じることができない環境にいる人がたくさんいる。

人と尺度が違うのだから、他人の生きる環境など関係ないのかもしれない。

だけど、当たり前が当たり前にあることの幸せを、

そんな小さな幸せを幸せだと感じることで、

すっと肩の力が抜け、見える世界は変わるのではないかと、私は思う。

#46 GREEN / TOKIO

広い宇宙のような

母の胸のような

いつか少年のような時へ

もう二度と戻れないなら

せめて連れて行こう

               GREEN / TOKIO(作詞:HIKARI)

 

2002年にリリースされたTOKIOの26 thシングル曲。

3曲でひとつのラブストーリーというコンセプトのシングルであったが、

シングルの表題が「GREEN」であるのに、2曲目に収録されていたことが心象的で、

今でも記憶に残っている。

2002年のTOKIOのリリース曲は私の中では豊作で、花唄、GREEN、ding-dong、

どれも名曲ぞろいである。

特にGREENは緩やかなテンポで比較的高音を伸びやかに歌わなければならず、

音楽性も良い意味でジャニーズらしくなく、歌唱力やセンスを感じさせる。

 

永遠の愛を誓ったラブソングとのことだが、「愛してる」や「永遠に」など、

くさい言葉が一切使われておらず、寡黙な男性らしさを感じると共に、

言い回しが独特で、言われないとラブソングと思わない上品な歌詞が目を引く。

特に印象的な部分が上記部分で、戻れないならせめて連れて行く、

というフレーズが耳に残る。

幼い頃から長い月日を共にした二人が描かれているからだろうか。

GREENというタイトルも、

青々しい若葉や若かりし青春時代のイメージから付けたのだろう。

それともこれからの日々に花を咲かせるであろう二人のことだろうか。

 

子供の頃に一緒にいるときは、ひたすら楽しかったのだろう。

それでも人は大人になるにつれて世界の闇を知り、

その闇からうまく逃れようと考えるようになり、純粋な気持ちは失われていく。

隣にいるあの子に、子供ながらに無重力の広い宇宙にいるような楽さ、自由を感じ、

母の胸のような温かさと優しさを覚え、闇を知らず無邪気に笑い合っていたあの頃。

子供は大人になれるけど、大人はもう子供には戻れない。

戻れないのならば、そこに決別するのではなく、

その思い出と共にあなたをこの先の人生へと連れて行く。

 

人が「この人と人生を共に生きていこう」と思うきっかけは何なのだろうか。

ありふれた日常に感じる親近感なのか、ふとした時に垣間見える容姿の美しさなのか。

恋をする時のそれとは、重さが違う。

それを決断するきっかけなんて、

誰に聞いても本当のところはわかっていないのかもしれない。

「なんとなく」それが一番続く愛なのかもしれない。

遊びまわるほどの体力があった若かりし日々や、激しく求め合った日々も、

歳を取るにつれて欲も薄れていけば心も落ち着いて消え去っていく。

どんなにあの頃に戻ろうと思ったって、時を戻すことは出来ない。

「素敵な思い出」と仕舞い込むのではなくて、「あの時はこうだったよね」と、

いつでも思い出の宝箱を開けることができるその人を、

彼は人生の幕引きまで連れて行くことに、決めたのかもしれない。

#45 僕たちの決断 / Do As Infinity

「今年の暮れでスタジオが閉まる も一度集まろうぜ?」

知らないメールを開けたとたんに12年間が埋まる

「本気かな」つぶやくと会議が止まった

あの日から錆びた弦 ろくに弾けない僕だけど

それぞれ歩く道を僕らなりにあの時選んだはず

最期のアンコールはあれからずっと胸でなり続けている

       僕たちの決断 / Do As Infinity(作詞:Psycho Kawamura)

 

 2011年にリリースされたDo As Infinityの25thシングル「アリアドネの糸」収録。

一度解散した彼らが再結成し、2009年に再びリリースを始めたわけだが、

気がつけば解散する前よりも再結成後の方が活動期間が長くなっている。

近年のリリース曲はオリコン順位から見ても落ちてきてはいるが、

当初はまだ人気があり、表題曲「アリアドネの糸」はドラマ主題歌に起用されていた。

本作はそのカップリングとして収録された楽曲である。

 

夢に向かうリスナーの背中を押そうと、励ます曲はたくさんある。

しかしながら、夢を叶えられた人間よりも、

叶わずして歳を重ねている人のほうが、世の中圧倒的に多いだろう。

だから本当は、夢を追う若者に向けた楽曲だけでなく、

夢に敗れて普通の生活に身を置いている人々に向けた曲が、

もっとたくさんあっても良いのではないかと思う。

もちろん、世の中ポジティブでポップな曲が求められヒットするのは理解している。

それでも、夢は叶えるものでなく見るものだった人々へ向けた、

あの頃は輝いていたと思い出させるような「僕たちの決断」の歌詞は、

とても魅力的に感じ、夢を叶えようともせず見ていただけであった私にも、

心くすぶる内容となっている。

 

この歌詞の主人公が見ていた夢はバンドで成功すること。

メンバーそれぞれが各々の道を進むことを決め、

主人公のように普通の生活に身を置く人もいれば、

まだ夢を追ってバンドを続けている人もいた。

そんな中あるきっかけで、当時のメンバーが集まることに。

半端な気持ちで会えはしないと、距離を置いていた主人公が、

再びギターを手にしてメンバーの元へ向かう。

 

忘れてしまえるほど浅い夢じゃなかった。

僕らのあの決断。

誰もが経験する、と書かれているが、本当にその通りだ。

皆子供の頃に何かに憧れる。

野球選手、教師、アイドルや歌手、宇宙飛行士、パティシエ。

追いかけて諦めた人もいれば、夢見ただけで現実を生きた者もいる。

夢を手放す決断を、多くの人がタイミングは違えど経験している。

 

ギターを手に飛び出した主人公が、

諦めかけていた夢を叶えるような終わり方であったら、

私はこの曲をチョイスしなかっただろう。

「それぞれ歩く道は誰が正しいなんて決められない

僕らが描いた夢 時々確かめよう あの時の為に」

という歌詞で終わっているからこそ、共感したのだ。

時々思い出して、あの頃は楽しかったと、思い出に浸る。

そんな人はきっとたくさんいる。

だから、無理やり夢を叶えた結末にせず、

夢を叶えた人も別の道を行った人も、全てが間違いじゃなく、

時々そんな分岐点にいた自分を思い出してあげよう、あの時の自分のために。

そんなメッセージが込められた「僕たちの決断」に、魅力を感じたのである。