#17 Oh my love / ZARD

 

あなたといる時の素直な自分が好き

私の存在どれくらい?

広い背中に問いかける夏

               Oh my love / ZARD(作詞:坂井泉水

 

 

1994年にリリースされた、

ZARDの5thアルバム「OH MY LOVE」収録のタイトルチューン。

24年も前の曲というのだから驚きである。

昭和のポップスを感じさせる伴奏ではあるが、2018年の今聞いてもとても良い曲で、

坂井泉水の透き通る歌声がより一層ピュアな歌詞を引き立たせている。

 

好きになった人への気持ちが加速度を増して、

自分の心の中でどんどん大きくなる女性の気持ちを綴った歌詞。

昔の女性はどこか一歩引いて男性を見ていて、

心の中で男性が向かってくるのを待って見つめているような情景が頭に浮かぶ。

草食系男子なんて言葉が出回ったこの時代の女性には、

あまり共感されないかもしれないが、

きっと今の若い女性たちも本当はこの歌詞のような乙女心を持っていて、

どこかで男性から声を掛けられたり告白されるのを待っているのではないだろうか。

 

「私の存在どれくらい?」

直接相手に聞くのではなく、背中に向かって問いかけているシーンは、男心を擽る。

好きな人が出来ると、その人に会いたくてたまらなくなって、

約束をした週末が待ち遠しくなる。

誰もが経験したことのある青春や、大人になって夢中になったあの恋が、

そのまま蘇ってくるようなどこか懐かしげな伴奏やコーラスも、

目を閉じて聴きたくなるくらい心地良い。

 

ZARDから送られるメッセージは、今はもう途切れてしまっている。

それでも彼女がこの世に残した歌はたくさんあって、

新曲は出ないしライブには行けなくても、

名曲が今もたくさんの人に癒しや元気を与えている。

「私の存在どれくらい?」と聞かれれば、

間違いなく日本を代表する偉大なアーティストだと言えるだろう。

色褪せない歌詞と音楽と共に、彼女の歌はリスナーの記憶に残り続ける。

#16 こっちを向いてよ / WEAVER

君の笑顔が何年経ってもまだ胸の中で

好きだとは言えずにいた恋の方が

いつまでも消えないまま

足りない言葉も不器用な嘘も

全てかけがえのない二人の日々

歩き出した街の中 僕は今も空を見上げる 

いつか会えたら話せるかな

君の知らない儚い初恋

            こっちを向いてよ / WEAVER(作詞:河邉徹)

 

2014年にリリースされたWEAVERの4thシングル曲。

スリーピースバンドながらボーカルはピアノを演奏しており、

非常に珍しいバンドスタイルである。

また、ボーカルが作詞するバンドが多い中、

ドラムメンバーが作詞している点も特徴のひとつである。

 

好きな人へ好きと言えないまま、今を過ごしている人はたくさんいる。

そしてこの歌詞の通り、そういう恋は美しいまま記憶にいつまでも残り続ける。

甘く、でもほろ苦く、あの時は若かったなぁとか、

すごく好きだったなぁとか。

だから大人たちは声をそろえて青春時代を羨み、

青春真っ盛りの学生たちに羨望の眼差しを向ける。

自分が学生の頃は大して良いとは思っていなかったが、

やはり若いとは素晴らしいことなのである。

 

この曲の主人公は故郷を離れて暮らしているが、

戻ってくるたびにその地で恋をした初恋の人を思い浮かべている。

そして最後まで自分の方へ好意を向けられることはなく、

友達のままで終わってしまった儚い初恋は、本人に言えないまま。

「今だから言えることだけど、昔好きだったんだよ」

いつか会えたら話せるかな、なんて思っている所がまた心をくすぐる。

 

本当のことを言いたかったのに言葉が足りなかったり、

嘘をついて誤魔化してしまったり。なんて若かったのだろう。

それでも、好きになった人は人生の中で特別な人として記憶に残り続ける。

こっちを向いてよ、なんて直接言えなかった人。

深く交わることが出来なかったからこそ、美しいまま残る記憶。

何度も恋をして誰かに夢中になったって、忘れることはない。

でもそれで良い。それもまた生きた証。

経験を積んで、また素敵だと思う人が現れたときに、

その儚い記憶があればきっと次は言えるはず。

聞いていて、心が洗われるようなピュアな気持ちを蘇らせる曲である。

#15 innocence / hitomi

 

もしも人を傷つけたり

優しさ失いかけたりしたとしたら

この胸に宿るinnocenceを

子供の頃描いた夢を

思い返してみる

情熱が僕らに甦る 必ずね

                                              innocence / hitomi 

 

2001年にリリースされたhitomiの22ndシングル「I am / innocence」収録曲。

メッセージ性の強い歌詞と、サビに入るまでが非常に長いのが特徴的である。

個人的にサビまでにAメロやBメロを繰り返す曲は好きな曲が多く、

迎えたサビも壮大で聞いていてとても気持ちが良い。

特にhitomiは高いキーでも地声で出せるところも魅力のひとつであると思う。

 

大人になると忘れてしまう子供の頃の純粋な気持ち。

あんなにまっすぐに目の前の道を進んでいたのに、

いつから荒んでしまったのだろう。

いつまでも子供の心を忘れずに生きている大人もいるが、

大抵は世間体を気にして冷静に物事を対処している(ように見せている)。

 

そんな大人でも、大人だからこそと言うべきか、

たまにリミッターが外れて心無い言葉を他人にぶつけてしまったり、

わざと相手に不快な思いを与えようとしてしまう時がある。

そして実際にそうしてしまった経験は断片的であっても記憶に残っていたりする。

嫌なことは忘れたくても忘れられないものだ。

 

もし何かがきっかけで苛立ち、人に当たってしまいそうな時、

子供の頃の無邪気に友達と笑い合っていた日々や、

ひたすら何かに向けて頑張っていた時の気持ちを取り戻せたら。

なかなか難しいことだが、ドラマでもよくあるように、

昔の気持ちが甦って改心し前に向かっていく物語は、

現実にだって起こり得ることだと思う。

 

私はあまり目を輝かせていたような子供時代を送っては来なかったが、

頑張ろうと思う心は、過去の頑張った後の喜びの経験から来ているもので、

それもまたこの歌詞のように子供の頃の情熱を、

思い出させてくれているのかもしれない。

この胸に宿るinnocence。

大人になっても、無垢で純粋な心は今も必ず、そこにある。

#14 僕と僕らのあした / V6

どんなに辛い夜だって

超えた足跡はひとつじゃない

そうさ僕らはひとりきりで

強くなる必要なんてないさ

              僕と僕らのあした / V6(作詞:竹仲絵里) 

 

2007年にリリースされたV6の30thシングル、

HONEY BEAT / 僕と僕らのあした」収録曲。

当時HONEY BEATがヒットし知名度が上がっていたため、

両A面ではあるがこちらはあまり知名度は高くなかった。

V6はアイドルでもあるため明るい、もしくはクールな振り付きの曲が主だが、

ラード曲はジャニーズの中でも名曲が提供されている印象である。

 

辛いと思い伏せる時、「何で私だけ」と思う人は多い。

自分は不幸だ、辛いと思っている人間は、その時幸せで笑っていたり、

良いことがあった人ばかりに目を向けてそう思う。

もちろんその人にだって今は幸せに見えても辛い時期はあっただろうし、

これから待ち構えているかもわからない。

上にいると思う人間は下の人間を見下し、下の人間は上を見て羨んだりする。

では、同じ目線の人に目を向けることはあるだろうか。

 

ライバルとして切磋琢磨するも良し。助け合うも良し。

辛い時にこそ忘れてしまう。

あの時助けてくれたこと。声を掛けてくれたこと。

些細なことでも、何か救いの手を差し伸べていてくれた人がいたのでは?

自分だけ、なんて思ってはいけない。

この曲は孤独を感じた時に聴くと、

そんなことを思い出せるような歌詞やメロディーのように感じる。

 

人間は生きている以上、多かれ少なかれ色々な場面で他人と関わっている。

勉強だって部活だって、バイトだって塾だって、仕事だって家事だって。

何でも一人で立ち向かう必要はない。

というか、きっと自然と誰かと少しずつ時間を共有して関わっている。

今まで歩いてきた道を振り返れば、自分の足跡だけではない。

これは生きている全ての人間に共通して言えることだ。

だから、辛いときは頼って良い。誰に頼れば良いかわからなくても、

必ず誰かが関わってくれる。

塞ぎ込まず、外に出て誰かと共有して行って欲しい。

いつもそこには必ず誰かがいてくれるはず。

そう信じている。

#13 ずっと、ふたりで / 家入レオ

言いたくないこと

言わなくて良いんだよ

僕にもそんな過去ならあるし

だけど君を愛する気持ちには

何の曇りもないだろう

           ずっと、ふたりで / 家入レオ(作詞:杉山勝彦

 

2017年にリリースされた家入レオの13thシングル曲。

彼女の透き通る歌声と、高いキーでも力強くまっすぐ通る歌声が、

切なさとその中にある愛する気持ちの力強さを、上手に表現している。

 

人間は皆、人に言えない・言いたくない過去を持っているもので、

自分が見たり経験してきた全てを知るものは、誰もいない。

親だって全てを見ているわけではないし、

恋人と出会ったのだって人生の途中から。

言いたくないことは隠そうと思えば隠せるし、封印も出来る。

 

恋愛をすると、その人の全てを知りたいと思う人も少なくはないだろう。

まだ出会う前の自分の知らない過去を、何かから見つけたり人から聞いたり。

もちろん、ただ話していなかっただけ、ということだってある。

それでも自分の知らない過去に動揺し、相手を疑うことだってある。

言いたくないことは言わなくていい、自分にもそんな過去ならある。

この歌詞に惹かれてしまうのは、

私にも消したくても消せない過去があるということなのだろうか。

 

大事なのは、今のあなたを愛しているということ。

過去に何があったって、今目の前にいるあなたが、

自分にとってのあなたであって、過去のあなたを知らないからと言って、

何を疑うわけでもなく、全てを知ろうとするわけでもなく、

ただ今のあなたを愛している。

本当に人を愛すると、きっとそうなるんだろうと思う。

そして本当に大事なことは、いつか打ち明けてくれるのだろう。

この曲を聴くと、寛大な心を他愛のない会話から見つけられたような、

そんな感覚を覚える。

どんなに不器用で生きるのが下手だって、過去に何があったって、

その人を愛する気持ちは揺らがないと信じたい。

#12 Forever Young feat. UVERworld / AK-69

まだ終わらない

Forever Young

そう 今日という日は

お前に残された人生の一番若い日 

  Forever Young feat. UVERworld / AK-69(作詞:AK-69・TAKUYA∞

 

2016年にリリースされたAK-69の9枚目のオリジナルアルバム「DAWN」収録曲。

翌年の2017年にはUVERworldの30thシングル「一滴の影響」の、

カップリングにも収録された。

ヒップホップ系アーティストのAK-69とロックバンドUVERworldのコラボという、

珍しい組み合わせで、かつ強いメッセージが込められた歌詞が印象的な曲である。

意外性とメッセージ性が強く、インパクトが残る曲となった。

 

歳を取るのは誰もが嫌に思うもので、

身体が痛くなったり物忘れが激しくなったり、

身体に付いた傷や痣は消えにくく、目も見えづらくなってくる。

でも私たちは過ぎた若い頃の日々を思い返したり、

目先の楽しみに心を躍らせていて、

今日と言う日がどんな日なのかに目を向けることを忘れている。

 

「今日は残された人生で一番若い日だろ」

この投げかけるような言葉を、初めて聴いたときに自然と耳が拾った。

そうだ、その通り。

明日の自分は今日よりも若くない。

今日の自分が残された人生で一番若い自分。

やりたいことをやらないでどうする。

やり残したことを放置してどうする。

始めるべき時は今だ。

 

心に突き刺さる言葉とは裏腹に、重い枷の付いた足。

それもまた、歳を取ったということなのだ。

でも、動き出すことにエネルギーが必要になった人間に、

そんなことをしているとどんどん歳を取るぞと、

忠告してくれているのだと思う。

 

やるべきことは今やろう。

出来ることは出来るうちにやろう。

動くことに慣れれば枷は外れ、身体は軽くなる。

一日一日を大切にしようと思える。

大人になると、怠けてんじゃねぇぞと、叱ってくれる人も少なくなる。

そんな大人たちへ向けて、代わりに渇を入れてくれているのではないだろうか。

#11 STORY / 愛内里菜

 

1000回の涙と 1000回の喜びで

±0 だっていいさ

だってそれは

何もなかった0よりもずっと

意味のあるSTORY

                                                       STORY / 愛内里菜 

 

2009年リリースの愛内里菜の30thシングル「STORY/SUMMER LIGHT」収録曲。

愛内里菜としては翌年の2010年で引退したため、終盤のリリース曲となる。

昔から作詞は本人が行っており、当時の歌詞は意味がわかりづらい詞も多かったが、

この曲の最後のサビの歌詞は鮮明に記憶に残り、

10年弱の期間が経ってもふとした時に頭の中で流れるフレーズである。

 

損をすることを恐れて動き出せない人や、

悔しい経験をたくさんしている人へ向けたであろうこのメッセージ。

確かに自分も、「どうせ無駄だし」なんて思うと、

なかなか行動に移せないシーンはよくある。

何もせず過ぎた時間は、もしくは別の楽な道へ進むことに費やした時間は、

もったいないと感じるし、そんな日なのに何故か早く時間が過ぎてしまったりする。

 

もしあの時努力することを選んでいたら。

苦しくても、駄目だったとしても挑戦していたら。

たとえ利益がなかったとしても、その経験は自分の糧となる。

平坦な毎日よりも、良いこと悪いことででこぼこした日々は、

人間を強く成長させる。

 

何にも繋がらない無意味なものなんてない。

当たり前のことを言っているだけなのかもしれないが、

無駄なことなんてひとつもないと思えば、人生は有意義だ。

一生の中で良い事と悪い事は同じ数だけあると子供の頃に聞いた覚えがある。

きっとそうなのであろう。

今が楽しいと思っている人にも、掘り返せば辛い経験はあるし、

今が辛いと思っている人は、幸せな経験があるからこそ辛いと感じている。

忘れているだけで、全ては何かに繋がっているのかもしれない。