#34 THE OVER / UVERworld

自分に自信が無かった

できるだけ一人で生きて来た

でも君だけが離せない なぜ君だけが離せない

一人じゃないと

理解してしまった感情を抑えきれないと

認めた時になぜ涙が出たのかは分からないけど

よく見れば青空も青一色じゃ無い

その複雑さは心を映したようだ

            THE OVER / UVERworld(作詞:TAKUYA∞

 

2012年にリリースされたUVERworldの22ndシングル曲。

デビュー当時からリリースするほとんどの作品がTOP 10に入るほどの人気の中、

THE OVERは彼らの代表曲の部類に入る売り上げを記録したヒットシングルである。

抜粋した部分以外にもリスナーを惹きつける歌詞が多く散りばめられており、

本作は「詞」の観点で見ても非常に高い評価を得ている作品なのでは、と思っている。

 

子供の、特に思春期の学校という世界に閉じ込められていた頃は、

息苦しい毎日が続いていた。

もちろん楽しいこともあったが、毎日気にしていたのは回りの目だった。

もし何かのきっかけで嫌われて友人が離れていったり、いじめられたら。

昨日は普通だったのに次の日来てみたら変わっているくらいのセンシティブな世界。

ターゲットにされないように自分の意思を殺し、

できるだけ嫌われないような発言や行動を判断し選択してきた。

 

一人になってしまった場合に襲う孤独感や疎外感をできるだけ和らげられるよう、

誰に対してもあまり心は開かなかった。本音は心の中に閉じ込め、

その人が喜ぶ、かつ周りにも嫌な思いをさせないような行動を選択した。

確かにいつも誰かが近くにいたが、本当の自分は一人だった。

友人が急に離れて行っても困らないように、

出来るだけ自分ひとりで何とかできるように学校生活を送り、

頼るよりも頼られる存在になることを選択した。

 

大人になった今でも、そんな癖は残ったままだ。

どこか相手の喜ぶ選択を優先にする。そして人に頼るのは苦手だ。

それでも、恋人ができて、大切にされるという経験をして、

昔よりも素を出すことが出来るようになっていった。

歳を取れば図々しくなるものだろう。

しかしそれを差し置いても、一人じゃないと理解してしまった感情が私にもある。

人間の心は自分でも分からないくらい複雑なのだ。

だから、「傘をさすかどうか迷う程の雨 思い切りの無さは僕のようだった」、

「よく見れば青空も青一色じゃない その複雑さは心を映したようだ」

中途半端に見え隠れする人間らしい部分がうまく表現されている歌詞に共感した。

 

そしてこの曲の主人公はそんな人間であったにも関わらず、

最愛の人と出逢い、自分を委ねることを知る。

「未来へ向かうボートに乗って、オールで漕ぐ僕からすれば後ろへ進む。

僕には進む先は見えない。でも君が向かいに座って見ていてくれるなら」

 

思い切り恋をしろ、恋を知ってほしいという言葉には、

そんな世界を知らない若い人々への正しい助言なのだと大人になってわかった。

恋じゃなくても良い。心から誰かを信用し、愛情を持って接することで、

見えていた世界が違って見えてくる。

人に自分を委ねることを知るのである。

あなたを信じ、守り、助け、時には頼り、そんな人といつかきっと出逢う。

一人で頑張っていた自分に寄り添ってくれる人が現れる。

そこに、生きる意味が生まれるのではないかと、私は思う。

#33 Finally / 安室奈美恵

Finally, I can stop dreaming

願い続けた日がついに今スタートを切ったの

Finally, I can stop wishing

モノクロの世界がこの瞬間色づいてゆく

今ここに立つステージで新しいストーリーが始まる

守るものがあるから強くなれるの

光差し込む未知の世界へ

両手広げて全て受け止めるから

輝かしい未来へFinally

Finally / 安室奈美恵(作詞:Emyli/Matthew Tishler/Felicia Barton/Ben Charles)

 

2017年にリリースされた安室奈美恵のキャリアラストベストアルバム「Finally」表題曲。

引退発表後のリリースともあって、ダブルミリオンを達成した歴史的作品である。

彼女の引退を惜しむ声は今もなお溢れる一方で、ファンのことを考え、

心の準備をする時間を設け、多くのリスナーが最後という覚悟を持って、

彼女のラストツアーに臨むことが出来たことに、多くのファンから感謝の言葉が送られている。

 

私が彼女の曲と出逢ったのは2003年。

Four Seasonsが聞きたいという思いで、

6thアルバム「STYLE」を手に取ったことがきっかけである。

子供ながらに彼女の過去のヒット曲を多数耳にしたことがあった私に、

このアルバムはオープニングから衝撃的であった。

こんな感じはどう?と彼女からも問い掛けがあったように、

昔のイメージとは違う、新しい安室奈美恵がそこに居たのである。

 

それから翌年にリリースされた「GIRL TALK / the SPEED STAR」の2曲に思い切りハマり、

本格的に彼女のファンになっていった。

リリースされる作品はどれもクオリティが高く、STYLEからFinallyまで、

欠かすことなく新作が出るたびにチェックしてきた。

彼女から時代を駆け抜ける最先端の新曲が発表されることも、

最高の一言では表せないくらいに素晴らしいステージを目にすることも、

もう叶わないと思うと非常に寂しい気持ちになる。

 

それでもこの一年、最後なのだと心に言い聞かせながらライブにも行くことができたし、

私が出遭った頃より昔の曲も含め多くの曲を振り返り聞き返してきた。

心は不思議と彼女の決断を受け入れ、今日を迎えることが出来たのである。

2018年9月16日、安室奈美恵は引退し、過去の人となる。

これからは普通の生活を楽しんでほしいと思うし、

駆け抜けてきた分、腰を下ろしてゆっくりしてほしいとも思う。

もう何年かすれば息子が結婚して孫が出来るかもしれない。

今まで休む暇なく仕事をしてきた分、平和な日常が彼女を幸せへと向かわせてくれるよう、

願うばかりである。

 

I can stop dreaming

やりきった、という気持ちでいるのだろう。

輝かしい未来へ、向かうことが出来ますように。

青春と共にあった彼女の曲を、これからも聴き続けるだろう。

楽しい時間をくれた時の映像を、これからも見続けるであろう。

今、多くの人たちが引退してしまうことの寂しさよりも、

「ありがとう」という気持ちで満たされていると信じている。

今までありがとう、そしてこれからも安室奈美恵は永遠に。

25年間+最後の1年、駆け抜け尽くしてきた分、

これからの未来に多くの幸せがありますように。

最後は笑顔で!バイバイ。

#32 The One / EXILE SHOKICHI

たった1つの1人と1人の出会いが

奇跡と呼びあえるLove story

キミが笑う時 キミが迷う時

そのすべてに僕がいる

                  The One / EXILE SHOKICHI

 

2014年にリリースされたEXILE SHOKICHIの2ndシングル曲。

J Soul BrothersメンバーとしてデビューしてからEXILEに加入し、

その他ユニットも含め活躍する中リリースしているソロ楽曲である。

EXILE SHOKICHI本人が作詞作曲を担当しており、

ゼクシィのCMソングでも使用された、珠玉のラブソングである。

 

J Soul Brothers時代からテレビで歌唱しているシーンを見るたびに、

彼の非常に独特で力強くも透明感のある、

ハスキーな歌声での歌唱シーンに目が止まった。

苦しそうに歌っているように聞こえても高いキーをぶれずに出せていたり、

他の歌手とは少し違う喉の持ち主、という印象が今でもある。

 

彼の歌唱曲は圧倒的にダンスナンバーの印象があるため、

この曲がリリースされた当時は非常に珍しく、それがまた良く感じた。

これまでEXILE関連のアーティストにはあまりイメージがなかった、

結婚を髣髴とさせる爽やかで純粋なラブ(ウェディング)ソングであったことも、

新鮮であった。

 

様々な人が多種多様な出逢いを繰り返し、やがて1人の人と結婚を決意する。

同じ出逢いは1つとしてなく、なれ初めも人それぞれ異なる。

誰とも違うたった1つの出逢いを、皆大切にする。

パートナーに出逢えたこと、家族の中に生まれてきたこと、友達になれたこと。

地球上にたくさんの人がいて、たくさんの場所があって、違う文化があって。

その中で巡り合う確率を考えてしまえば、全てが奇跡と呼べる。

 

あなたの隣にその人がいることが奇跡。

街を歩く全ての人々の人生が奇跡。

こんなにもたくさん、毎日のように私たちは奇跡を目にしている。

笑っている時、迷っている時、誰かがそばにいることがどれ程素晴らしいことか。

 

良いことなんてない。

そんな風に思ってしまう時は、当たり前に大切にしている人と、

出逢わなかったらどんな人生を歩んでいたか、想像してみよう。

自分の存在意義を感じられなくなった。

そんな時は誰かにとって自分がいなかった時の事を想像してみよう。

小さなことだって良い。自分に助けられた人がいたはず。

助けるなんて大袈裟な事じゃなくても良い。

あの日あの人が面白おかしく笑ったことがなかったとしたら。

その一日に笑うきっかけを与えたのは自分なのだ。

 

You're the only one forever.

自分にとって全ての人がonly oneであるように、

自分もまた、皆のonly oneなのである。

奇跡は毎日のように、この世界で巻き起こっている。

#31 LOVE & HONESTY / BoA

大きな風の中

うずくまりながら思ってた

何もかも言える人がいたならと

ちっぽけな僕だから

みんなそうだから

強いとこ それより弱いとこ結ぼう

     LOVE & HONESTY / BoA(作詞:BoA / Natsumi Watanabe)

 

2004年にリリースされたBoAの3rdアルバム「LOVE & HONESTY」表題曲。

コーラスワークが光るミディアムバラード曲で、洋楽テイストな曲調。

アルバム曲と言うこともあり世間の知名度は比較的低いが、

当時アルバムはヒットし、10代とは思えない歌唱力と表現力で世間を魅了していた。

 

親に言えないようなことも、親友には言えたり、

友達にはなかなか言えないことを親に聞いてもらったり。

人は無意識のうちに話の内容と話せる人を分類している。

何もかも言える人なんて、そうはいない。

 

お互いの強みを褒め合ったり、共通の趣味で意気投合したり、

ポジティブな繋がりは自分を励まし人生を楽しくすることだろう。

魅力に惹かれるのは当然のことだ。

でもそれは時として、脆く壊れやすい。

一度亀裂が入るとあっという間に砕けてしまうこともある。

 

強い繋がりを求めている人にとって、

強く引き合わせる部分を見つけるには、何を見つめたら良いのだろうか。

親友なんて作ろうと思って出来るものでもないし、

結婚だって簡単に相手が見つかれば苦労はない。

うまくいかない人はたくさんいるし、何が問題なのかなんて、

本当のことはわからないことだってある。

 

ここが良いと思って好きになった。

この人と一緒にいて楽しいから、いつも一緒にいたい。

きっとみんなそんな気持ちから親友や恋人を作っている。

それが必ずしも脆く壊れやすい関係だとは言わない。

ただ、良いと思った人の悪いところは、いつ見えてくるだろう。

付き合う前から嫌なところがあれば、好きにならなかったかもしれない。

親友になる前に共感できない行動を目にしたら、共に生活はできないかもしれない。

後からそういう部分を見てしまうから、亀裂が生じる。

 

強いとこ、それより弱いとこ結ぼう。

自分が日ごろから駄目だと思っている部分を持っている人を目にしたら、

その人のことを煙たがるだろうか。

まるで駄目な自分を見ているようだと、目を逸らすだろうか。

コンプレックスに思っていることや、恥ずかしくて人には言えない趣味、

そんな部分を他人に発見できたら、嬉しく思わないだろうか。

眩しい人と無理に一緒にいて、自分を輝かせて見せなくたっていい。

弱い部分で繋がっている人達は、助け合うことを知っている人間だと思う。

もちろん、自分の足で立つことに越したことはない。

でも、独りじゃ地盤が緩くても、二人になるとしっかり立てるかもしれない。

 

人の良いところに目を向け、評価をすることは良いことだ。

でも、愛するなら誠実になろう。

悪いところ、簡単にさらけ出せないところ、

そんな部分を愛し愛される関係だからこそ、

これから先も断ち切られることのない絆が生まれるのではないだろうか。

今そばにいる人のネガティブな部分を、見つめることは出来ているだろうか。

本当は届かなくて伝わらなくて、隠している部分があるかもしれない。

そんなところをさらけ出して繋がることが出来たなら。

そのためにはまず、自分がさらけ出す勇気を持たなければならないのだろう。

#30 明日への賛歌 / flumpool

「いつでも優しい人」って君は慰める

だけど挑戦者で常にありたい

僕を縛り付けてよ

もう逃げられないように

この胸溢れ出す情熱で

何度だって焼き尽くしてよ

もう戻れないように

何が起きてもこの拳握りしめて

              明日への賛歌 / flumpool(作詞:山村隆太

 

2014年にリリースされたflumpoolの初のベストアルバム、

「The Best 2008-2014 「MONUMENT」」に新曲として収録された楽曲。

めざましテレビのデイリーテーマソングであったため、

長期にわたってパワープレイされた、彼らの曲の中では比較的知名度の高い楽曲。

flumpool自身もこの楽曲に込めた思いは強く、

発表以降のライブでは高確率でセットリストに入り、

ライブの締めくくりアンコールのラストなどに起用されていた。

 

思うがまま走っていた若かりし頃からいつしか、

大人になると気づいたときには聞きわけが良くなり、

褒められることが大事になって言われたことだけやるようになってしまった。

そんな自分も昔は情熱を持って生きていたじゃないかと、

忘れた記憶を取り戻させるように心に訴えかける歌詞が印象的である。

 

ドラマでもよくエピソードにあるように、人は若い頃に持っていた情熱をいつしか忘れ、

社会に馴染みルールを守ることで身を守りながら生きるようになる。

ぶつかるのも嫌だし変に争うこともしたくないからだ。

本当は自分の指針を持っていたはずなのに、いつしか忘れてしまう。

周りと争わないように主張せず生きていると、

「○○君は優しいね」、「○○君の良いところは優しいところ」、なんて、

優しい部分しか褒めてもらえるポイントがなくなってくる。

大勢の人から言われればそれは事実として一見認められているように聞こえるが、

裏を返せばそれしか褒めるところがないのである。保守的だね、と言われているようなものだ。

 

もう逃げられないように縛り付けてくれ。

戻れないように過去を焼き尽くしてくれ。

忘れていた情熱を捨てずに、目を逸らさずに歩いていきたいという気持ちを、

力強い言葉で表現している決意に満ちた歌詞だ。

 

人は逃げ道を作るから弱いまま。

だからそんなものは焼き尽くしてくれと、

そんな言葉が心の扉を叩く。

それほどの決意を持って、私達は何かに向き合うことが出来ているだろうか。

大人になればなるほど、逃げることや目を伏せることに慣れてしまう。

慣れてしまえば日常を変えるのはより困難になる。

後悔する前に、何かを失う前に、一歩踏み出すことが出来た人間は、

「優しい人」では終わらないだろう。

そこに自分がカテゴライズされることはできるのか。

すべては自分次第である。

#29 27 / 西野カナ

突然の結婚ラッシュ

一抜け、二抜け、ついにあの子まで

急にちょっと焦ってみたり

だけどまぁいっかってなったり

転職サイトを眺めてみたり

これでも一応将来のことは考えているの

そんなに心配されるほどじゃない

                         27 / 西野カナ

 

2017年にリリースされた西野カナの30thシングル「パッ」収録曲。

恋愛歌ばかりを歌うイメージが強い彼女であるが、

カップリングやアルバム曲では上司や仕事に対する愚痴であったり、

血液型に関する歌詞であったり、誰の日常にも転がっているような、

メインの曲のテーマにはなりにくいが「あぁわかる」と思わせる、

身近な歌詞が多くのリスナーの共感を得ている。この曲もそのひとつと考える。

 

27歳。まだ20代、若いけれどもうすぐ30歳。

社会人としては後輩や早ければ部下も出来て、仕事もバリバリこなせるようになる。

それでも40代、50 代の人から見ればまだまだ若くて可愛い部下。

自分もまだ若いと思う気持ちと、そろそろやばいと思う気持ちが入り混じる、

大人と子供の狭間の10代後半とはまたタイプの違う、非常にデリケートな年齢。

それでも10代の頃とは違い、学生や社会人を経て色々な経験をしてきたからこそ、

どこか腰が据わっていて落ち着きもあり、少しの諦めにも慣れてきている年頃。

まだ若いと扱われることもあれば、

いくつだと思ってるんだと言われることもしばしば。

 

2014年にリリースされた「25」の歌詞と比べても、

「27」の主人公の方がどこか落ち着きがある。

20代後半に突入し、周囲の色々な変化や自分の身体の変化に焦りを感じて、

生き急いでいる「25」とは違い、30代が見えてきて逃れられないと悟ったのか、

私は私だし、と言わんばかりの流されない人格が形成されつつある。

昔よりも少しだけ、未来を考えることが出来ている証拠だ。

 

結婚したり転職したり、ライフイベントは20代にたくさん訪れることが多い。

自分ももうそんな歳になったのかと、寂しい気持ちがあるのも確か。

20代が終わるカウントダウンが始まっていることに、

今から焦ったって、と言う気持ちと、何か出来ないか、という気持ちが入り混じる。

まだ甘えていたいと思うことと、しっかりしなきゃ、家庭を持とうと思う気持ち。

葛藤がない年代などないのだけれど、きっと同年代の人々はこの曲にどこか共感し、

耳を傾けるのではないだろうか。

 

25、27と来たら、彼女が描く「30」の世界も是非読んでみたい。

彼女の歌詞は、この人にしか書けないだろうと思うような、

飛びぬけた表現や例えが書かれているわけではない。

それを否定する言葉も耳にしたことはあるが、

誰もがそうだよなと思う当たり前のことを当たり前にあえて書いてくれている、

そんなアーティストがいても良いのではないかと、私は思う。

#28 街 / 堂本剛

君が苦しめられない保証がこの街にもあれば

勇気なしで背中押したけど

未だ気がかりだよ

強がるときが来たとしたら

これはチャンスだって

君ならきっと笑い飛ばせてるよね

                           街 / 堂本剛

 

2002年にリリースされた堂本剛のソロデビューシングル「街 / 溺愛ロジック」収録曲。

ソロ活動はKinKi Kidsとは完全に切り離して行われており、

KinKi Kidsの楽曲の雰囲気とは一転した曲のリリースが多い中、

デビュー当時の楽曲は比較的J-POP色の強い曲が多い。

デビュー曲として両極端な2曲が両A面としてリリースされ、

「街」は王道バラード曲となっている。

 

どこか暗いイメージの強い堂本剛

彼の描く世界は独特な世界が多く、時に理解し難い内容も多い。

しかしこの曲はまだ彼が20歳そこそこの年齢で書かれた曲だからか、

人間の揺れ動く内面や叫びがストレートに綴られており、

とても共感しやすい曲となっている。

 

人間らしい一面を見せているのは、

ネガティブな気持ちとポジティブな気持ちが入り混じり、

浮いては沈むような流れになっている部分である。

夢を捨てた日のことを思い出して胸を痛めているシーンがあれば、

小さい男で終わりたくないと鼓舞しているシーンもあり、

自分が傷つくこともあるのだけれど、人の痛みは見失いたくない、

という弱さと強さが交互に見えるような所に人間らしさを感じる。

 

自分のいる街、君のいる街。

街は様々な顔色を持ち、様々な人間がそこで共存している。

しかし共存はしているものの、互いに関わろうとはしないのが現代。

君が苦しめられない保証がこの街にもあれば、勇気なしで背中を押した。

恋人と別れるとき、子供が成長し家を出て行くとき、転校・留学・転勤、

様々なシーンで別の街へと離れていく人の背中を見届ける。

その人が暮らす街は安全だろうか。ちゃんと食べているだろうか。

風邪を引いたときに通える病院はあるか。地震や災害の危険はないか。

大切な人を見送るのだから、そんなことを思う人はきっと多いはず。

未だ気がかりなんだけど、君ならきっと笑い飛ばせているよね、

という心の中の葛藤のような言葉は、多くの人の胸を打つだろう。

 

ご近所同士や商店街に通う人々が助け合っていた時代と、現代は違う。

周りの人の優しさに触れる機会は極端に少なく、

今や自分を守れるのは自分だけ。

だから離れた街で暮らす自分の大切な人のことも心配になる。

時代は時代。全国的にそうなってしまっているとは言わないが、

昔のように人々が助け合う世の中にはもう戻らないだろう。

自分を守り生きていく時代。人と関わる事は少なくなっている。

それでも人の痛みがわかり、気付ける人間でありたい。

そのために私たちはこの時代を、どう生きていくべきなのだろうか。