#82 キミがいる / CHEMISTRY
昨日までの憂鬱は捨てて変わらない明日を祈ろう
確かなことはただひとつだけ
手を伸ばせばほら君がいる
ありふれたいつもの道 ふたり何気なくただ歩いてく
確かなことはただひとつだけ
目の前にはほら君がいる
2005年にリリースされたCHEMISTRYの14thシングル表題曲。
当時、乳がんを患った女性をテーマにしたドラマの主題歌に起用されていた。
バラード調のゆったりとした曲を歌うイメージが強い彼らだが、
本曲はかなりアップテンポで、川畑と堂珍の掛け合いも聴き所のひとつ。
暗めの曲が多い彼らのイメージを一掃した、良い意味で「らしさ」がない楽曲である。
ここ最近は、連日コロナウィルスのニュースばかり。
世界中が恐怖の渦の中に閉じ込められている。
身近に感染した人がいなくても、マスクをしていない人と対面することに嫌悪感を抱いたり、
出掛けるのを控え、人と密閉された空間にいることを避けることが当たり前になってきている。
そんな中でも、テレビで見たことがある芸能人が感染したニュースを聞くと、
緩みかけた意識がまたコロナウィルスに向くようになる。
志村けんが亡くなったニュースは、世間を悲しみで埋め尽くした。
身内を亡くしたような、深い悲しみを感じているわけではない。
しかし、彼が亡くなったことで、自分の家族への心配は増大し、
籠ったままの状態で曇っている心と相まって、重く、憂鬱な気分に襲われる。
彼の死は、コロナウィルスの恐怖を世間に再認識させ、そして事の重大さを伝えている。
親がもし感染したら。そんなことを想像する。
今自分の身の回りには被害がないことに安堵し、
明日もこのまま、平穏のまま変わらないでと、願っている。
暗い気持ちを今日に置いていきたい。
目の前に大切な人がいるということを、確かなものに思いたい。
今この時に、この曲はとてもマッチしていると思う。
背中を押してくれて、軽快なリズムが重たい心を少し持ち上げてくれる。
曲の中盤までは、変わらない明日を祈ろう、と投げかけているのに、
最後には新しい明日を祈ろう、と励ましてくれる。
変わって欲しくないものほど、変わってしまうから恐ろしい。
だけど今は、脅威から免れ続ける変わらない日々よりも、
新しい明日を、今よりも明るい未来を、待ち望んでいる。