#65 ひまわり / 星村麻衣
ありがとう
いつでも微笑みくれたね
僕は返せていたかな
そんな当たり前の幸せに気づかない僕だった
君との思い出ひとつひとつを壊さずに
ポケットにつめこんで
守ることが勇気なのかな
2004年にリリースされた星村麻衣の5thシングル表題曲。
小児病棟で繰り広げられる命の物語がテーマの、
ドラマ主題歌としてオンエアされていた。
歌唱力の高いソロアーティストの一人で、
比較的知名度のある曲を複数世に送り出している。
幸せは大抵、自分ひとりでは作れないものだと思っている。
誰かが隣にいて、微笑みあう幸せ。
誰かが作った美味しいものを食べて感じる幸せ。
ひとりで居る時間の幸せさえも、誰かがくれたもののように感じる。
(普段誰かが近くにいるからこそ、ひとりを楽しく感じるものだ。)
当たり前の幸せに、当たり前に浸っていると、
いけないと分かっていても感覚は鈍り、定着してしまう。
それもそれで幸せなのかもしれないけれど、
ありがとうの気持ちを失くした瞬間に、幸せは不幸への道へと進行方向を変える。
返せていただろうか。微笑みを、感謝を。
いなくなって初めて気付く大切さを歌う歌なんて、山ほどある。
だけど私が心に留まったのは、その思い出を守ることを「勇気」としたところにある。
幸せのピークを過ぎて下降地点や最下地点にいる時、
最高の状態を思い出すことは地獄を見るようなものなのだ。
だけど、あなたがくれた幸せに、失ってやっと気付けたのだから、
どんなにこの先思い出して胸が痛んだって、忘れてはいけない。
その決意を持てた心に、美しさを感じた。
だからこの曲の2番の歌詞が非常に気に入っている。
ひまわりは夏の花。
夏が来るたびに、君といた季節が重なり思い出す。
その度に胸が痛むのだ。
あの時言えなかったありがとうに。
あの時返せなかった微笑みに。
ひまわりが咲くたびに、心を試すように記憶を蘇らせるのだ。
それでも、その後悔を忘れずに胸に刻む勇気を持つことが出来たから、
この主人公はもっと、いつか次に出逢う大切な人を大事に出来るだろう。
ありがとうを言葉に出来るようになるだろう。
巡り来る夏にいつも、君を重ねて。
恋愛は人を成長させる、とは、きっとそういうことなのだと、
やっとわかった自分がいるのである。