#73 My Baby Grand ~ぬくもりが欲しくて~ / ZARD

常に前向きなんて…

みんな弱い部分持ってる

心許したごく少数(わずか)な友人(ひと)には

おしゃべりになれるのに

ぬくもりが欲しくて

胸の奥に深く秘めた想い

誰にでもいい顔する人はキライだよBABY GRAND

         My Baby Grand ~ぬくもりが欲しくて~ / ZARD(作詞:坂井泉水

 

1997年にリリースされたZARDの23rdシングル表題曲。

寒い冬に温かみを届けるサウンドが印象的なミディアムチューン。

ボーカルの坂井が愛用していたトイピアノを、

「Baby Grand」という愛称で呼んでいたらしく、

タイトルはそこから来たと思われている。

 

どんなことがあっても物事をネガティブに考えてしまう人からすると、

何でもポジティブに受け取る人間が羨ましくも、憎らしくもある。

前向きに考えられたらどれだけ楽だろう。

解っているのに、どうしても心配してしまったり、悪い方向に進むことを想像したり、

人を信じられなくなったりする。

 

だけど、そんな人にも、自分を曝け出せる大切な友人が居て、

そのネガティブさを受け止めて心配してくれる人がそばにいる。

そこでため息を付いている人も、日々の不満を吐き続ける人にも、

スポンジのようにそれをちゃんと吸収してもらえているのだと思うと、安心する。

私もそう。平気な顔をして毎日を過ごしているけれど、

大切な人にこそ「辛い」「苦しい」と漏らしてしまう一人だ。

 

寂しくて、ぬくもりが欲しくて、人ごみを歩く。

90年代のシーンが思い浮かぶのは、この曲がその時代に書かれた曲だからだろうか。

寂しさのどん底を味わったことがないせいか、私には人ごみは冷たいと感じる。

こんなにたくさんの人が周りに居るのに、誰一人自分を見ていなくて、

ここに居るのに居ないような、そんな感覚を覚えるからだ。

誰でもいいから、私を見てと、そばに居てと、思っていても、

結局その人ごみから自分の手を取ってくれた人は、誰にでもいい顔をするような、

そんな人間でしかないのだから。

 

「心許したごく少数の友人にはおしゃべりになれるのに」

このフレーズを初めて聞いたときに、とても共感したことと、

それを歌詞にしてしまうZARDのセンスに感動した覚えがある。

学生の頃から感じていたけれど言葉にしたことがなかったような感覚が、

歌詞になっていてとてもこの曲が好きだ。

自分が心を許したごくわずかな人にだけ自分を曝け出すことが出来て、

そんな自分にとってみれば誰とでも仲良くなれるような、

ひねくれて「薄いヤツだ」と言い飛ばしてしまいそうな、八方美人の輩が嫌いだ。

あぁ、そうだそんなことを口に出さなくても心のどこかで思っていたなと、

繊細だったあの頃を思い出すから、なんだかとても、懐かしい。