#75 一雫 / ZONE

ふっと気づくと遠く見えてた

空は明るくあたたかくて

両手伸ばして抱きしめてた

迷いも不安も消えていた

あなたの存在がすべてを埋めつくしていた

ずっと側にいたいと思う気持ちは

次々と溢れ押さえ切れずに

自然と素直に今変わる自分が伝えたい想い…

それはあなたが心の中に…いるから

やさしさに初めて出逢った頃は

この胸の奥がハガユク感じ

何故か一雫の涙が頬をそっと伝わったよ

                  一雫 / ZONE(作詞:町田紀彦

 

2002年にリリースされたZONEの6thシングル表題曲。

ガールズバンドとして一世を風靡し、活動期間は短かったものの、

「secret base~君がくれたもの~」や「true blue」など、

数多くのヒット曲を世に送り出した。

バラードの名曲が多く、この「一雫」も歌詞が心に染みる名作のひとつである。

 

わがままを言えない子供だった。

自分の欲を貫くと、嫌われる気がして。

嫌なことでも「いいよ」と言った。

仲間はずれにされるよりはマシだったから。

だから、側にはいつも誰かがいた。

でも彼らは肝心なときには側にいてくれなかった。

味方を失い仲間はずれのターゲットになってしまった時に、

皆決まって私を逃げ場に近寄ってきた。

私はそれでも、本当の仲良しではなく利用されているのがわかっていても、

無碍に扱うことが出来なかったことをよく覚えている。

 

大人になって、恋人ができた。

恋人に対しても同じだった。

自分の欲を押し出すのではなく、相手の気持ちを尊重した。

行きたいところ、食べたいもの、遊びたいこと、休みたいとき。

でも苦痛じゃなかった。恋人は楽しそうにしていたし、

子供の頃のことがあったからか、特にしたいことも見たいものも、

やりたいことも気付いたらなかった。言ってもらえて助かっていた。

嫌なことは嫌だと言えるようにはなっていたが、

本当に嫌なことではない限り、別に何でも良かった。

それなりに楽しめたから。

私もそれなりの人と恋をし、日々歳を重ねてきた。

そろそろ落ち着くものだと思っていた。

こうやって、死ぬまでなんとなくで生きていくのだと。

 

そんな時、愛されるとはどういうことなのかを、教えてくれる人が現れた。

尽くされるのはこんなに素敵なことなのかと、初めて知った。

嫌なことは何でも嫌だと言える。

良いことは何でも良いと言える。

褒めてくれるから、素直に褒めてあげられる。

わがままを言ってしまったり、時にきつく当たってしまうけれど、

ずっと自分を愛してくれるだろうと感じるから、

どんなことがあっても嫌わずに側にいてくれると解るから、

格好をつけずに自分が自分で居られることの素晴らしさを、

そして取り繕わなくても愛されるのだと言うことを、知った。

 

この歳にして、無償の愛に、本当のやさしさに出逢うとは思わなかった。

ずっと側にいたいと思う気持ちを、私も同じように感じる。

自然に素直になった。

迷いや不安はあるけれど、そんなことで断ち切ることなんて決してない。

心にはあなたがいる。

 

いつもわがままを言ってごめん。

疲れているときや辛いときにきつく当たってごめん。

それでも側にいてくれてありがとう。

愛されることの幸せを、教えてくれてありがとう。

君に何か、返せるように。

君の願いに、応えられますように。

君とずっと、側にいられますように。